白妙町在住の映画監督・中村高寛(たかゆき)さん(42)が監督・構成を務めた「禅と骨」が9月2日から横浜ニューテアトル=中区伊勢佐木町2の8の1=などで公開される。横浜出身の日系米国人で禅僧のヘンリ・ミトワさんの生涯を描いたドキュメンタリー。中村さんにとってデビュー作以来となる11年ぶりの作品で「横浜の近現代史を見てほしい」と訴える。
「メリー」以来2作目
中村さんは2006年、伊勢佐木町に立ち続けた娼婦”ハマのメリーさん”に迫った「ヨコハマメリー」で監督デビュー。横浜文化賞芸術奨励賞などを受賞。その後はテレビドキュメンタリーなども手掛けている。「禅と骨」は中村さんにとって、「ヨコハマメリー」以来、11年ぶりの作品。
08年、今作のプロデューサーでもある林海象さんからミトワさんを紹介された。ミトワさんは1918年、根岸で生まれた日系米国人。40年に渡米し、第二次世界大戦中は米国の日系人強制収容所で過ごした。61年に日本へ戻り、73年、54歳で京都・天龍寺の僧侶になった。
撮れぬ葛藤抱えて
ミトワさんは96年、作家・菊池寛の『赤い靴はいてた女の子』をモチーフにした映画化を宣言し、その後はスポンサー探しに奔走。中村さんは、執念を燃やして映画化を目指す点に興味を持って接するようになった。中村さんの監督デビュー後、いくつかの企画が持ち込まれたが、条件や予算が折り合わずに頓挫したことがあった。2作目を産む難しさに葛藤を抱える中、「『赤い靴』を撮りたくても撮れないミトワさんの思いと自分の境遇が重なる部分があった」と振り返る。
撮影途中で主人公死去
出会いから3年後の11年に撮影を始めた。ミトワさんに密着しての撮影が始まってから8カ月後の12年3月、ミトワさんが倒れ、6月に93歳で亡くなった。予期せぬ展開に「思っていた半分も撮れなかった」というが、同時に「ミトワさんからバトンを渡されたと思った」とも言う。
その後はミトワさんの知人や関係者の取材を丹念に行った。「会う人によってミトワさんの印象が違う。人間らしさを描ければ」と考えた。波乱万丈の人生を紹介し、出会いから約8年をかけて作品が完成した。
ドキュメンタリーに加えて、タレントのウエンツ瑛士さんが青年時代のミトワさんを演じるドラマ部分やアニメーションもある。山下公園などでも撮影した。音楽は「クレイジーケンバンド」の横山剣さんやエディ藩さんなど、横浜ゆかりのアーティストが担当した。
中村さんは「ミトワさんは横浜のDNAを表し、近現代史を浮き彫りにしてくれる一人」と語る。「横浜にはさまざまな題材がある」と中華街の事務所を拠点に今後も作品を撮り続ける。
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