井土ヶ谷小学校(有馬武裕校長)に植えられていたエノキの木の移植式が7月11日に行われた。このエノキは同校出身で今年4月に亡くなった児童文学作家の長崎源之助さんから贈られたもので、広島の原爆に耐えたエノキの「3世」にあたる。これまでは校庭隅の倉庫裏にあったが、学校中央に移され、シンボルツリーとして平和の尊さを児童に伝えていく存在になる。
長崎源之助氏が寄贈
この木を贈った長崎源之助さんは、同校の前身にあたる井土ヶ谷尋常小学校の第1期卒業生。戦争や平和を題材とした児童文学作家として活躍し、教科書にも使われた「つりばしわたれ」などの作品を残した。1970年からは自宅の一部を「豆の木文庫」として開放し、蔵書を通した子どもの教育に力を注いでいたが、今年4月に87歳で亡くなった。
原爆に耐えた1本
2009年2月、長崎さんは「広島のエノキが子どもたちに平和を伝えていってほしい」と願い、苗木1本を母校に贈った。このエノキの「祖父」にあたる木は、広島市の爆心地に近い陸軍病院の庭にあったもの。終戦後、木は奇跡的に生き残り、13本の「被爆エノキ2世」が誕生。全国の学校に寄贈された。この話は長崎さんの作品「ひろしまのエノキ」にまとめられている。長崎さんが寄贈した「3世」は福岡県で育てられた木から生まれたもの。
苗木は同校の栽培委員を中心に育てられ、高さ1mだったものが2年間で3mに成長した。これまで、校庭隅の体育倉庫の裏に植えられていたが、日当たりが良いところに移そうと、6月15日に学校中央の職員室前に植え替えられた。
移植式には児童のほか、長崎さんの妻・和枝さんや豆の木文庫のスタッフも参加。各学年の児童が作文を発表し、1年生の男子は「エノキさんがみんなを守ってくれる」と話していた。
和枝さんは「大切にしてくれて感謝したい」と児童に話し、「夫も空の上から喜んでいると思う」と思い出が詰まったエノキの植え替えを喜んでいた。
同校の有馬校長は「子どもたちは場所が移されてエノキを見る機会が多くなった。今後も平和の大切さを訴えていきたい」と”シンボルツリー”が児童を見守る存在になってほしいと期待していた。
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