市立中村特別支援学校(佐塚丈彦校長)が出版した重度の肢体不自由児の教育に利用する独自の「中村うんどう基礎プログラム」が、教科書として全国の学校や保護者の間で活用されている。販売した印税は赤十字に寄付され、7月19日には感謝状が贈呈された。
重度の肢体不自由児が通う同校では「中村うんどう基礎プログラム」という独自指導法を2008年から行っている。これは、日常生活動作を学ぶ「自立活動」の時間で利用されており、それを同校で編集した「わたしたちのうんどう」を教科書として2012年7月に出版、一冊1890円で販売している。約3千部を売り上げ、印税55万2149円を、赤十字社に全額寄付したところ、19日に同社から感謝状が贈呈された。
同プログラムは、子どもたちとコミュニケーションをとりながら触れ合い、生活動作や生活の質の改善を進めようというもの。佐塚校長は「肢体不自由の子たちは、自分の手や足を認識することが難しい。話しかけながら触れることで、自己の身体認識にもつながるようになる」という。全国的に養護学校では、自立活動の時間にマッサージや運動など行っているが、統一の教科書や指導法がなく、内容がばらばらだった。「この学校には初めて肢体不自由児に接する教諭もいるため、分かりやすい指導方法を作ろうと考案した」と同プログラムが生まれたきっかけを話す。
表彰を機に書籍化
2011年、同プログラムが児童・生徒の教育に貢献した団体の取り組みを公益財団法人博報児童教育振興会が表彰する「博報賞特別支援教育部門」を受賞した。これを機に、今まで学校で印刷していたものを、保護者や全国の養護教諭にも分かるようなやさしい教科書にしたいと、「わたしたちのうんどう」をジアース教育新書から出版した。
同書には、同校教諭によるイラスト付きの解説があり、頭部から足部まで全身の触れ方、運動動作が紹介されている。制作には理学療法士や同校教諭が携わり、同プログラムの裏付けとなる解剖学や運動生理学を解説した「NMBPの理論と実際」も出版している。
佐塚校長は「大学附属の学校では、研究内容などが製本されることはあるが、公立の学校が編集して出版した例はほとんどないのでは」と話し、全国的にも珍しいという。
出版から1年が経過した現在では、全国の学校や保護者の間で活用され「分かりやすい」、「子どもたちの表情が良くなった」という声が寄せられている。
学校で今年5月に購入した横須賀市立養護学校の菊池剛校長は「校内での指導を統一でき、保護者にも利用してもらえると思う。今後、教科書として採用できればと考えている」と同書を評価している。
佐塚校長は「この教科書を使った研修会を定期的に行いたい」と話し「子どもへの声のかけ方をイラスト部分に追加したい」とさらに利用者が使いやすいよう改良を重ねていくという。
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