助産院で産後母子をケア 市がモデル事業開始
横浜市は国の事業化に先駆け、育児不安の早期解消のための「産後母子ケアモデル事業」を10月1日から開始した。神奈川県内初の事業で、南区三春台の「みやした助産院」を含めた市内8カ所の助産院が委託を受け、心身ともに不安定になりやすい生後4カ月までの母子をサポートする。
不安や悩みに対応
同事業は、家庭的な施設環境の助産所で、育児のアドバイスや健康管理の指導を受けたりすることにより、母親の育児に関するストレスや悩みを早期に解消し、児童虐待などの未然防止につなげることを目指す。国でも少子化対策の一つとして、来年度から同様の取り組みを始める予定。
施設宿泊も可能
利用料は日帰りの「デイケア」が1日最長8時間、2食付で1日あたり2千円、宿泊ができる「ショートステイ」が24時間、3食付、1泊2日で6千円。対象は生後4カ月未満の子を持つ母親で、【1】横浜市民である【2】家族などから産後の援助が受けられない【3】育児不安等が強く支援を必要とする【4】母子共に医療行為が必要ない――の4項目すべてに当てはまることが条件。申し込みを受けた区役所が育児状況などを確認し、利用の可否を判断する。
委託先の助産院は7月に公募し、選定委員会が決定した。委託先となった区内のみやした助産院は2005年から、産後の体力回復や授乳方法の指導など、同事業と同様の産後入院サービスを行う。同院は6部屋を完備、月平均で約15人の利用があるという。同院で出産した緑区の女性は「家のようで、スタッフの人も優しく、安心する」と話す。
「虐待・放棄防止を」
同院の宮下美代子院長は「出産直後は何も分からず、精神的にとても不安定になる。専門家からアドバイスをもらう安心感はとても大きいもの」と産後ケアの重要性を話す。利用者から寄せられる育児不安は、授乳についての相談が多いという。また、子どもとの距離の置き方、息抜きの程度が分からず、ノイローゼになってしまう母親が少なくない。授乳や沐浴の方法などの技術を教えることはもちろん、精神面のサポートも経験豊富な助産師が行うことで、虐待や育児放棄などを未然に防ぐ役割も果たす。「この事業により、少ない費用負担で産後ケアを受けられるので、より多くの母親が利用できるのでは」と宮下院長は話す。
開始したばかりの同事業に宮下院長は「まだ広報活動ができていない。市内で委託先が8カ所しかないので、周知された後、受け入れ不可ということがないようにしたい」と話している。
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