大鷲神社の責任役員の一人で、11月3日から始まる「酉の市」の準備を進める 中村 宣吉さん 真金町在住 78歳
縁の下で伝統祭事支える
○…初冬の風物詩を目前に控え、準備に追われる。警察や区役所などへの許可申請や地域、屋台出店者との折衝など、7月から準備を続けてきた。酉の市に携わり25年。市の無形民俗文化財に指定されている伝統行事を守るためにも「地域の人に愛され、事故のないようにしなくてはいけない」と気を引き締める。
○…毎年10万人以上が訪れる酉の市。自身が子どものころは「見せ物小屋など、ワクワクするものが多かった」と振り返る。最近は屋台の8割が飲食店となり、様相が一変。同時にごみや駐車をめぐる問題を抱え、神社の周辺住民の理解を得るのが難しくなりつつある。「酉の市の由来や地元で栄えてきた歴史を知らない人が増えている」と残念がる。それでも、祭事を支える自身の原動力は「郷愁が強いからかな」という。
○…遊郭が並び、花街としてにぎわい「おおらかな人が多かった」という真金町で生まれ育つ。小学生のころは、夏になると南吉田小に子どもから大人まで集まって、ギンヤンマを追い掛けたことを懐かしそうに思い出す。大学卒業後は商社でプラスチック製品の開発を担当。40歳を前に独立し、真空包装機械の製造・販売を手がける。その時に作った機械は全国の食品工場や病院で稼働しており、今でも自宅を兼ねた会社でメンテナンスを受けている。
○…10年前から町内会長を務める。区内でも特に外国人が多い地域で、生活や文化の違いを目の当たりにすることが多い。ごみの分別法を伝えるために、自ら外国人の家に足を運び、根気強く説明することも。「こちらから近付き、笑顔で接すれば、心を通わせられる」。多文化交流を身を持って体験したからこそ、心の底からそう言える。「お三の宮にお酉さん、この地域は祭り抜きに運営できないね」。伝統の祭事を縁の下で支えつつ、新しい時代の流れにも対応していく柔軟さで、地域の連帯感とにぎわいを作り出していく。
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