印章彫刻士として「横浜マイスター」に選ばれた 國峯 伸之さん 大岡在住 47歳
父の座を追いかけて
〇…熟練した技能が認められ、「マイスター」の称号を得た。今年度選ばれたほかの4人は60、70歳代。「年齢は若いが、積んできた実績、自分の仕事には自信がある」と言い切る。1996年に選ばれた父・正美さんに続く初の”親子マイスター”だ。「父から教わったことを終わらせてはいけない。多くの人に伝えたい」。2012年に他界した師匠の技術をつなぐ決心だ。
〇…父がはんこを彫る姿を見て「モノを作り出す感じが伝わってきた」と中学生のころに家業を継ぐ決意を固めた。Y校卒業後に修業開始。仕事を見て盗む職人の世界で父の手元を食い入るように見続けた。「いつも悩まずに彫っていた。あれだけ早く、丁寧に彫り上げる人はいない」と今でも驚く。97年に全国の職人が集まる大会のゴム印彫刻部門で優勝するなど、実力を発揮。次第に父に認められ、仕事の一部を任されるようになり、二人三脚で仕事を進めるようになっていた。
〇…父が3年前に亡くなり、常連客が離れるのではと不安になった。しかし、「マイスターの息子だから、あなたに頼むよ」と仕事は途切れなかった。最近は、はんこの文字線が父の作品のような穏やかなパターンに魅力を感じてきたという。依頼者と丹念に打ち合わせ、性格なども加味して彫る。「一度字を書いて2、3日寝かしてもう一度見ると、また違うアイデアが浮かぶ」と常に最善を尽くそうと試行錯誤を重ねている。
〇…3人娘の父親。「長女はサービス業に興味があって」とモノ作りとは違うことへの関心に苦笑い。店に並ぶ商品は決して安くない。「手間をかけていい仕事をしようとしている。値段以上の価値を感じてもらいたい」。父が店内で作業時に座っていた席はこの3年間、そのままにしてある。「マイスターになったので、もう座って良いかな」。肩書きだけではなく、実力で父を超えようと、職人の技術を守り、店の中心で客を迎えようとしている。
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