横浜市の地域まちづくり推進条例に基づく施策「ヨコハマ市民まち普請(ぶしん)事業」が今年10周年を迎えた。身近な生活環境の整備を主体的に行う住民団体に市が助成金を交付するもので、これまでに南区の3団体を含む41団体が選出され、まちづくりを通した課題改善などに向けた取り組みが各地域で進んでいる。
市は地域のまちづくりを住民と「協働」で行いたい考えがあり、その理念や考え方、施策を盛り込んだ同条例を2005年10月に施行させた。条例を進めるための一案として計画されたのがまち普請事業だ。住民らからの提案に対し、2次にわたる審査を経て選出されると、最高500万円が市から交付される。助成はハード(整備)に対して行われるもので、今年度までの延べ提案件数は125件。このうち41団体が選ばれ、助成額は約1億7600万円に上る。
提案件数は事業開始初年度が最多の31件で、06年度には20件、近々では14年度が7件、今年度は9件となっている。区で見ると最多の青葉が17件に対し、最少の保土ケ谷は2件にとどまるなど、地域間の差がうかがえる。
南区では05年度に永田町上第三町内会がビオトープ作りで初の採択を受けた。06年度に登り窯と永田の自然を守る会、11年度にお三の宮通りまちづくり委員会がそれぞれ採択されている。
空き店舗活用
これまでの提案内容はさまざまだが、この5年ほどは空き店舗活用が増えているという。
そうした事業の一つが、09年度採択の金沢区・西柴団地商店街の「さくら茶屋」だ。団地住民の高齢化、商店街のシャッター化が進む現状を打破しようと、空き店舗をシニア層らが飲食もできる憩いの場にリニューアル。その後、住民は子どもが利用できる「さくらカフェ」を近隣店舗に自前で開設した。
12月9日の市会定例会で林市長は、事業全体について「整備や活用の段階を通じて、市民活動の幅が広がっている」と10年間の成果を強調した。
積極性に地域差
まちづくり推進条例は、まちづくりのルール作りを行う団体の勉強会に助成も行うなど、さまざまな住民支援施策が盛り込まれているが、市都市整備局は「まちづくりを行う地域と行わない地域で『格差』が広がっている。特性を踏まえた取り組みが必要」とする。
条例の立ち上げに関わり、まち普請事業の審査委員長も務めていた早稲田大学の卯月盛夫教授は「日本の都市計画は明治以降中央集権で進められてきたが、1980年代以降、市町村と市民の協働が登場した。しかし、市民提案が進まない中、市民目線のまち普請事業は画期的」と話す。
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