横浜市はこのほど、2015年度の児童虐待にかかわる対応件数を発表した。総数は5470件で、そのうち、区役所によるものは前年度に比べ1・5倍に増加。市は、14年度に全区に設置した「虐待対応調整チーム」の働きが大きいと分析している。
総数は最多更新
今回、市が発表した件数は、児童虐待にかかわる通告・相談に対して、全18区役所と浦舟町の中央児童相談所など4つの児童相談所が調査などを行った総件数。毎年度増加しており、15年度も過去最多を更新した。区別件数について市は、「誤解を招く恐れがある」として公表していない。
対応機関別にみると、児童相談所の件数が前年度比275件増の3892件で約8%の伸びに対し、区役所のそれは、562件増の1578件で、50%を超える伸びとなっている。
児童相談所の場合、虐待の相談や通告を受けてから対応するケースが多く、予防策まで手が回らないのが実態。一方、区役所は、母子手帳交付や乳幼児健診、児童手当の手続きなど、職員と親が接する機会が多く虐待の早期発見による未然予防が期待されてきた。
そこで、市は区役所の対応力向上のために、14年度に全区のこども家庭支援課に「虐待対応調整チーム」を設置。同チームは、専任の保健師1人を含む社会福祉職の職員らを中心に組織される。
「手を出しそうだ」「泣き声がひどい」など、区役所に寄せられる親や近隣住民からの相談に専任の保健師が対応。また、窓口を訪れた親から、子どもが言うことを聞かないなどの不安を確認した場合にはチームで情報共有するとともに、一人で抱え込まないよう赤ちゃん学級や親と子のつどいの広場を紹介するなど、重大化の対策として効果が出ているという。
心理的虐待が4割
発表された5470件の内容は、DV(家庭内暴力)などによる心理的虐待(2241件)と身体的虐待(1594件)が7割。区役所の1578件は、就学前の子どもに関係する業務経由が多いことから、実母などによるネグレクト(育児放棄)が720件(45・6%)で最多。児童相談所の3892件は、警察経由が約4割となっており、心理的虐待が1825件(46・9%)と約半数を占めた。
南区は地域で情報共有
南区の傾向について、南区こども家庭支援課は「経済的事情からネグレクトにつながるケースが多い」という。南区では、区内を7エリアに分け、「児童虐待防止会議」を開いている。区担当者のほか民生委員、保育園、幼稚園、小中学校、地域ケアプラザなどの関係者が集まり、個別の家庭や子どもの情報を共有する。同課は「会議の場で『あの家の電気が何日も消えたまま』などの具体的な情報が交換されている」という。
市主任児童委員連絡会代表の梁田理惠子さん=中区=は、児童虐待の対策として「大小さまざまなサロンを開くなど、地域を通じて子どもたちを見守ることが大切」と話している。
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