慶応義塾大学理工学部教授で秋の褒章で「紫綬褒章」を受章した 大西 公平さん 永田台在住 64歳
多くの失敗を肥やしに
○…ものに触れた時に感じる触覚や触れたものから受ける力覚の伝達技術を世界で初めて発明するなど、電気電子工学で長年にわたる研究の功績が認められ、秋の褒章で「紫綬褒章」に輝いた。受章を聞き「びっくりした。派手さはなく地味な学問なので」と笑う。2万人以上の学者や技術者が所属する電気学会では今春まで会長を務めるなど、研究者からの信頼は厚い。多くの人から届いたという祝福のメッセージに喜びの表情を見せる。
〇…和歌山県出身。幼いころはクモの糸を使ってセミを捕まえる道具を作るなどして遊んだ。「虫取り網もなかった時代。自然の中でいろいろなものを作った」と振り返り、自ら考え、何かを生み出す力を日常で育んだ。東京大学大学院で博士課程を修了し、工学博士に。慶応大学電気工学科の助手や講師などを経て、1996年から教授を務める。学生と進める日々の研究は「『教える』という気持ちはない。ディスカッションが面白い」と目線を合わせた指導を心掛ける。
〇…失敗の連続だという研究者の日常。「うまくいかないことは次にうまくいくことの肥やしになる」。壁にぶち当たることは何度もあったが失敗で得た成功への扉を一枚ずつ、根気強く開いてきた。人間の五感の一つである触覚を伝達する技術を2010年に実現し、特許を取得。ものの硬さや柔らかさ、性質によって柔軟な接触行動などができるロボットの創造に取り組む。「自分が研究対象になったことを想像し、相手の気持ちになって突き詰めていくと問題点が見える」。創造・想像力を大切にする。
〇…南区での生活は約30年。自宅そばのこども植物園や児童遊園地は「2月、3月ころに梅が見られる」と気に入っている。世界の成果につながる可能性を秘めた研究者の創造的仕事は「ある意味でスリル満点」と微笑み、多くの失敗を肥やしに開発した技術が世界に広がる時を想像する。
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