南区役所は5月19日から、ひきこもりなどの困難を抱える若者の専門相談窓口を設ける。1カ月に2日間、専門の相談員が当事者や家族の悩み、不安を聞く。同様の取り組みは他区でも始まる。推計では、ひきこもりの若者は市内に8千人以上いるとされており、市は新たに年間約1300人が相談可能な受け皿を作り、手厚い支援につなげたい考えだ。
ひきこもりとは、6カ月以上にわたって社会参加を回避し、ほぼ家庭に留まっている状態を指す。
市こども青少年局によると、横浜市には家庭や学校での人間関係、就職活動のつまずきなど、社会的、心理的な要因で不登校やひきこもり状態になってしまう若者(15歳〜39歳)が8千人以上いると推計している。市はこの現状を課題と捉え、対策を検討。市民にとって身近な存在である区役所に専門の相談窓口を設けることを決めた。
社会福祉士ら対応
全18区で5月中旬からひきこもりに関する相談を月に2日間実施する。対象は市内在住で15歳〜39歳の若者とその家族。若者の自立支援などを行う「地域ユースプラザ」に所属する社会福祉士などの資格を持つ相談員が対応する。1回50分で予約が必要。南区では第1・3金曜日の午後1時30分〜4時30分が相談日。1日最大3人まで対応する。これにより、全市で年間約1300人の相談を受け付けられるようになる。
段階的に支援
市はこれまでも、ひきこもり解消に向けたサポートを段階的な支援体制を整えた機関で実施してきた。初期段階から総合的な支援に関しては「青少年相談センター」=南区浦舟町=で対応するほか、「地域ユースプラザ」を4カ所に設置。「若者サポートステーション」(横浜駅西口ほか)では、社会復帰に向けた就労を支援している。2015年度の新規利用者は青少年相談センターが229人、地域ユースプラザが293人、若者サポートステーションは1111人。
新たに区役所に相談窓口を設けることについて、青少年相談センターの内田太郎所長は「『どこに相談すればいいのか』といった疑問が解消される」と利点を説明。さらに「ひきこもりに関する問題は複雑化しており、医療や生活保護に関する区役所内の各課につなぎやすくもなる」と話す。
内田所長は「本人や家族だけでは対処が難しく、相談をしないまま長期化、深刻化するケースも多い。抱え込まずに相談してほしい」という。
「当事者の声聞いて」
ひきこもりの支援を行う一般社団法人「ひきこもりUX会議」の林恭子さんは、「当事者の中には、『相談機関に行っても、悩みを分かってくれるのか』と思う人が多い」と話し、区役所への窓口新設は「保護者が相談する場合は便利になるだろう」という。その上で市のひきこもり支援策について「もっと当事者の声を聞く機会を作ってほしい」と要望した。
南区は今後、民生委員など、地域の関係団体に相談窓口の存在を知らせ、潜在化して見えづらいと言われるひきこもりの支援に力を入れていく。
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