〈連載〉さすらいヨコハマ㉘ 映画の中の横浜【3】 大衆文化評論家 指田 文夫
横浜を舞台にした映画は、100本くらいあり、日活が多く、次いで東宝と松竹だが、大映と東映、新東宝は少ない。
理由は、松竹は大船、東宝と日活も横浜に近かったからだ。さらに、日活などに多いのは、海外へ出る場として横浜が位置付けられていて、大映などには、主人公が日本から海外に行くテーマがなかったからだ。
1964年まで、普通の人は自由に海外に行けなかった。勝手に出るのは密航で、吉田喜重監督に『日本脱出』が、鈴木清順監督に『密航0ライン』があり、どちらも横浜港からの密航を描いている。
前者では、チンピラ鈴木やすしが追い詰められ、大さん橋から密航しようとして捕まる。後者は、横浜から香港への闇の航路があるという筋で、記録映画的に桜木町や野毛が描かれている。もう一つ、港町の秘密めいた裏社会があり、ほとんどはウソだが、黒澤明の映画『天国と地獄』は、そこを上手く造形していたのはさすがだった。
(文中一部敬称略)
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