最新号:2012年2月 9日号
2010年7月15日号
○…「石ばしる 垂水の上のさわらびの 萌えいずる春に なりにけるかも」。春を思わせる美しいピアノの音に乗せて、和歌を澄んだ高らかな声で歌う。日本に現存する最古の歌集「万葉集」の中で志貴皇子が詠んだ歌。「『都会の縄文人』って言われるくらいテンポがずれてる私にとって、ゆったりとした万葉の世界はとても合っているんです」と優しく微笑む。あずき色の優雅な着物が柔らかな表情をさらに艶っぽく見せる。
○…万葉集の和歌は、人の心を自然に例えて歌うことが多い。雲の動きが人の心の動きを表したり、山が亡くなった恋人の姿になることもある。「人の気持ちが自然に溶け込んでいるところが好き。この『大和心』を若い人たちにも伝えたい」と、5年前から「万葉びとの心をうたう歌手」として活動している。歌うとき大切にしているのは「万葉の世界に浸って、日本語の語感を美しく表すこと」。
○…歌手デビューは43歳と遅咲き。そのきっかけを作ったのは師匠・藤岡宣男氏との出会い。そのカウンターテノールの歌声は心を揺さぶり、大きな衝撃を受けた。その日から彼の弟子となり、平成16年2月にリサイタルデビュー。横浜、東京、九州を中心に、200回を超える舞台を踏んだ今でも、「音楽はどんなときでも私を救ってくれた。音楽と自分は切り離せない」と初心を忘れない。「人の心にすっと入る自然な歌を、生きている限り、歌い続けます」。凛とした表情で、そう誓った。
○…かつて保土ヶ谷駅そばにあった富士見が丘女子高に10年にわたり勤め、音楽の授業を担当する傍ら、今回コンサートを行う岩間市民プラザでもボイストレーニング講座を開くなど、保土ケ谷区については「とても馴染み深い所ですね」とニッコリ。万葉の世界を多くの人に知ってもらうため時には自腹で海外公演も敢行するその歌声が、“第2の地元”でどう響くのか−。開演が今から、楽しみだ。