仏向町にある火薬工場跡地を中心とした山林をフィールドに緑地保全活動を行っている市民団体「カーリットの森を守る市民の会」(中村雅雄代表)が活動開始から20年を迎えた。10月末には20年の歩みを振り返る総会を開催。節目を迎え中村代表は「次世代にこの豊かな自然を引き継げるよう、今後も努力を続けたい」と会の活動の第2章を展望した。
大正時代から操業してきた火薬製造工場「日本カーリット社」の移転に伴い、保土ケ谷区と旭区にまたがる約60ヘクタール(東京ドーム13個分)の緑地帯の跡地開発計画が持ち上がり、再開発や乱開発を懸念し「貴重な森を守ろう」と地域住民らが中心となり1997年秋に結成された同会は当時、緑地保全を求める署名活動に奔走。
2カ月半間で約1万3800筆の署名を集め横浜市長に届けた。同時に市議会にも一帯を保全型の市民の森などに指定し、乱開発から守るよう働きかける運動を展開した。
絶滅危惧種も生息
こういった市民らの働きかけで守られた緑地帯はその後、「カーリットの森」の通称で知られるようになった。同会が行った動植物の調査では、県の絶滅危惧種に指定されているホトケドジョウや鷹類など、1千種近い動植物の生息・生育を確認。初夏には森の中にある4筋の沢ではゲンジボタルが舞う姿が見られるほか、フクロウが樹洞に生息するなど、多様性を持った生態系が形成されている。
10年前からは山林の一部を里山再生の場と位置付け、長年、人の手が入らず荒廃していた山林の下草刈りや枯れ木の伐採、間伐を定期的に実施。ドングリから育てた苗木を植樹するなどした結果、「眠っていた」野草が芽を出し、蝶が舞い、カブトムシが集まる「活気ある森」へと変貌しつつあるという。
この日の総会では定点観測用の撮影カメラが盗難の被害にあうなど、20年の間にあった苦労話なども交えながら会の歩みを回顧。会の発足から20年の節目を迎え、中村代表は「フクロウが繁殖できる森に育てていければ。その森を次世代に引き継ぎたい。そのためには新たな担い手が必要。森を守り、育てたことが第1章だとすれば、これからは第2章」と話した。
思い描く未来像「緑の回廊」
カーリットの森の周辺には陣が下渓谷や睦ヶ丘緑地、桜ヶ丘緑地、初音ヶ丘の村瀬の森、境木緑地などが点在している。この緑地がつながり、「緑の回廊」を形成することが守る会の描く未来像だ。
その実現には「より多くの地域住民に豊かな自然に触れてもらうことが重要」と考え、近年は学校やキッズクラブなどで出前講座を行うほか、里山での体験型イベントやクラフト教室などを通じ、地域住民に「森の大切さ」を伝える活動を強化。また地域で活動する他の市民団体とも積極的に交流を持ち、情報を共有することで点在する貴重な自然を一帯で守る一歩を踏み出している。
中村代表は「徐々に緑は減ってきている実態はあるが、出来る限り食い止め、この貴重な自然を残していきたい。その先に『緑の回廊』の実現がある」と話す。
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