日本盲人職業開発センターで講師を務める 松坂 治男さん 駒岡在住 63歳
盲目のエンジニア
○…「視覚障害になって友達が増えた」。視力を失った代償に得た財産を、満面の笑みで語る。現在、日本盲人職業開発センターで講師として、視覚障害者の就労支援に力を入れている。教えるのはパソコン操作。「人とのつながりが好きな人にはメールのやり取りを、音楽好きには動画サイトをまず教える」と、生徒が意欲的に取り組めるよう、工夫を凝らしている。
○…浜町生まれ駒岡育ち。大学卒業後、スイッチ製造会社のエンジニアとして世界を股にかけた。順調かと思われたが、30代になると目に異常を感じるようになる。医者から失明宣告を受け、逆境に立たされるも「見えなくなったらその時考えればいいや」とケロリとしていたという。しかし、文字が、物体が次第に見えなくなり、40代で退社。それでも「みんなに支えられた」と頼れる仲間に恵まれ、電子部品製造会社に再就職。歩みを止めることはなかった。退職後、60歳で筑波技術大学院に入学。視覚障害者が平らなスマートフォンをどこまで扱えるかを研究した。
○…趣味はダイビング。無重力下での遊泳に心地よさを感じ、これまで160回以上、各地の海に潜ってきた。「この間はフィリピンのセブ島で潜ってきた」とアクティブなセカンドライフを送る。奥さんとの旅行も大好き。「目的地を一つ決めて、あとは現地に行ってから考える」と、縛られない自由な旅を好む。「ご当地Tシャツを買うのが好きなんだよ」と、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』のTシャツを見せて笑う。
○…「視覚障害者をタイムリーに案内できるナビを開発したい。情報がないと不安になるから」。自身の苦労を踏まえ、視覚障害者の負担を減らす道を今後も模索していく。「自分ができることは提供したい。できる範囲で最新技術を取り入れたい」。目下の課題はアイフォーン5sの活用。全盲のエンジニアには、目標がはっきりと見えている。
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