「心の復興」に力尽くす 精神科医が被災地支援
区内の2人の精神科医が、東日本大震災で被災した宮城県石巻市などを訪れ、被災者の心のケアにあたっている。医師らは、「ケアにはまだ長い時間が必要」と、今後も支援を継続していくつもりだ。
現在も1万人以上が仮設住宅での生活を送っている石巻市。現地では、地域とのつながりを失くしたり、自宅の再建になかなか目途が経たないなど、様々なストレスが被災者の心の不調につながっているという。
◇◇◇
うしおだ診療所=本町通=の野末浩之医師は、精神科医師を派遣し、精神疾患の疑いのある仮設住宅への訪問や健康相談などを行う「からころステーション」(一般社団法人震災こころのケア・ネットワークみやぎ運営)の活動に参加し、2カ月に一度石巻を訪れている。活動を始めたのは2013年の秋。このタイミングには理由があった。「震災直後から、精神科医として何かしたいと思っていたが、震災からすぐは支援が集まりやすかったと思う。時間が経ち震災への関心が薄まりつつある時期にこそ行きたかった」
更地のままの現地を訪れ、進まない復興の現状を目の当たりにした野末医師。震災から3年経った今も心の不調を抱える人は減っていない実感がある。「ケアにはまだ長い時間が必要」と野末医師は話す。
◇◇◇
小原クリニック=鶴見中央=の小原博医師は、野末医師が支援活動を始めるきっかけになった人物だ。震災直後の11年5月から被災地の支援を続ける姿が、野末医師の背中を押した。小原医師もまた「からころステーション」の活動に参加し、被災者の心と向き合っている。
◇◇◇
「震災直後は、ある意味被災者に活気があった」。避難所で互いに肩を寄せ合うようにして暮らす被災者たちには、「助け合い頑張って生きよう」という思いが感じられた。被災体験を「聞いてほしい」という人も多かったという。
その後被災者の多くが入居した仮設住宅は、プライバシーが確保される一方、それまでのコミュニティーを確保することが難しく、被災者同士の交流は減ってしまった。医師の訪問も「何しに来たんだ」と心を閉ざし拒む人も多いという。「被災者は今、孤独に見える」と小原医師は言う。
◇◇◇
「『行って意味があったのか』としょぼくれて帰ってくることも多い」というほど地道な支援活動。しかし、不安を抱え込んだ被災者がいる限り「働く余地はある」と小原医師は考えている。「家に訪問すると、『誰にも話せず、死にたかった』という人に出会うこともある。たった一人でも元気になってくれるのであれば、これからも続けていきたい」。被災者の心の復興のために、2人の医師は人々に寄り添い続ける。
|
|
つるぎん27日に4月25日 |
|
|
|
|
<PR>