「落とした家の鍵を警察に届けてくれた人にお礼がしたい」。編集室にそんな電話がかかってきたのは、6月23日のことだった。
落とし主は、区内在住のSさん(77)。20日に買い物へ出かけた際、落としたのだという。「多分、バス停だと思うの」。Sさんは振り返る。買い物先に連絡を入れたが届けはなく、タクシーでバス停に戻って周囲を探したが、見当たらなかった。
大切なキーホルダー
大切だったのは鍵ではなく、付いていた二つのキーホルダーだった。
一つは、昨年4月に亡くした夫の遺骨が入った小びん型のもの。そしてもう一つは、今年4月、喜寿祝いにと娘と二人で出かけたイタリア旅行のとき、バチカン宮殿で土産物店の店主からもらったコイン型のものだ。「店主の方も介護の末にお母さんを亡くされていて、元気なうちに連れて行きたかったと。『楽しい旅行を』とくれたんです」
丸一日ふさぎ込む
二つとも二度と手に入らない、鍵よりも大切なもの。気が付くところを探しても見つからず、「もうダメだと思っていた」とSさん。落とした翌日は、丸一日ふさぎ込んだ。
22日、娘から「ダメ元で警察に届けてみたら」と言われ、別所交番に遺失届を提出した。
「似たものが届いている」。警察から連絡が来たのは、届け出てすぐだった。合鍵で照合し、3日ぶりに無事手元に戻った。
気持ち伝えたい
「本当に有難かった」。安堵する一方、すっきりしない気持ちも芽生えた。「ただの鍵だけではなかったこと、感謝を伝えたい」。守秘義務があり、伝えられない拾い主の個人情報。手紙を届けてもらえないか――交番に相談すると、「おそらく鶴見の人、タウン紙に相談してみてはどうか」と返ってきたのだという。
「届くかわかりませんが、本当に感謝しています」。深い謝意を示したSさん。「警察の方には、『旦那さんも家に帰りたかったんじゃないか』って言われたの」。そう言って笑った。
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