先天性の知的障害を抱えながら30年間にわたって清掃業などに従事している一藁徹さんがこのほど、厚生労働大臣から表彰を受けた。
市内のグループホームで暮らす一藁さんは58歳。1982年から財団法人「横浜市知的障害者育成会ワーキングセンター」=二ッ谷町=の従業員として、主に市内の公共施設等の清掃業務や植栽管理などを担当してきた。雇用事業所の伊澤和弥センター長によれば、一藁さんは「字は書けず、時計も読めないが、性格は真面目そのもの」。学習能力も高く、仕事のクオリティは一般の人と比べても「まったく遜色ない出来映え」という。こうした長年にわたる功績が認められた今回の厚労大臣表彰は、県内でも9年ぶりという快挙となった。
障害者年金を加えれば現在、月に10万円程度の収入がある一藁さん。グループホームでの生活費を差し引いても、趣味である「ズボン収集」を満喫できる程度の余裕があるという。しかし、こうした例は近年では稀(まれ)で「知的障害者の雇用環境は厳しくなる一方。障害者年金だけでは苦しく、生活保護に頼る人も増えている」と伊澤さん。同センターは「終身雇用」と「県最低賃金以上の確保」を掲げるが、現実的には「仕事の確保」に頭を悩ませる日々が続いている。「清掃の依頼があっても、あまりにも賃金が低く、受けてしまうと逆に従業員の生活が維持できなくなる事にもなり、やむなく断らざるを得ない場合も多い」。結果的にセンター職員が少しでも良い条件の仕事を確保するために地道な「営業活動」をすることも珍しくないという。
一藁さんが従業員として迎えた3年目にセンター長に就いた伊澤さん。真面目に働く側と、必死に雇用を維持する側の「二人三脚」も、四半世紀を超えた。同センターも今回、一藁さんの大臣表彰にあわせて「障害者雇用優良事業所・努力賞」を受賞している。
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