2015年の横浜市救急出場件数(速報値)が1月15日、発表された。昨年から2225件増の17万8344件で、5年連続過去最多を更新。救急隊到着から搬送開始までの「現場滞在時間」が伸び続けていることも課題となっている。背景には高齢化の影響があるとみられ、市では対策を模索している。
消防局によると15年の現場滞在時間は平均21・1分。10年前の14・2分と比較すると6・9分延びている。その要因の一つとして挙げられるのは、65歳以上の高齢者の搬送件数の増加だ。15年の速報値では、高齢者の件数は8万5934件(全体の55・4%)で、5年間で1万2880件、割合は17・6%増加している。さらに消防局の予測では、10年後には約11万件にまで増え、割合は6割を超えるとされている。
同局によると、高齢者はほかの世代と比べ、症状の聞き取りのほか、保険証や常用薬の準備といった身支度に時間を要するケースが多い傾向にあるという。「普段から必要なものをまとめておいていただくと短縮につながる」と担当者。こうした現状を受け、鶴見区内では、医療・介護機関が連携し、診察や薬の記録、緊急連絡先等の情報を一冊のノートにまとめる独自の取り組みを行っているという。
搬送先選定は改善
現場滞在時間が延びる一方で、「搬送困難事案」の改善は進んでいることも分かった。搬送困難事案とは救急隊が患者の搬送先を選定する際、5回以上電話照会を要する事案のこと。14年の搬送困難事案は1402件で、5年間で1367件減少。全体での割合も2・0%から0・9%に下がり、8割以上が1回で搬送先が決まるなど、改善が進んでいる。
背景には、同事案を受け入れる市内22の病院の協力や、12年6月から搬送先病院の受け入れの可否等をリアルタイムで確認できる「横浜市救急医療情報システム(YMIS(ワイミス))」の運用等がある。「システムだけでなく、医療機関や救急隊の努力等が実を結んだ」と医療局担当者。高齢者の搬送についても対策の必要性を認識しているとし、医療関係者らからなる市救急医療検討委員会でも15〜16年度にかけて課題解決に向け議論を進めているとしている。
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