横浜市の最高顕彰である「第65回横浜文化賞」の今年度受賞者が9月23日に発表され、和裁士の鈴木榮治さん(70)=神大寺在住=が社会貢献・スポーツ部門技能文化分野で受賞を果たした。
市では毎年、芸術・学術など文化の発展に尽力した、その功績が顕著な人・団体に同賞を贈っている。着物や和裁の分野での同賞受賞者は初めて。鈴木さんは全国トップクラスの技能を有し、後継者の育成や技能五輪などで多くの入賞者輩出につなげたとして選ばれた。受賞の一報を受け、「着物という分野の中で、和裁が文化として認められたということが何よりうれしい」と喜びをみせる。
200人以上育成創作研究も
鈴木さんは新潟県出身。地元の高校を卒業後、中区にある三溪園を造園したことでも知られた実業家・原三渓氏の専属仕立師だった義父の背中を追うように、和裁の道に進んだ。「継いでほしいと言われたわけではなく、自然と継承していかなければという使命を感じた」と振り返る。
亡くなった先代を継ぎ、36歳で神奈川県和裁高等訓練校校長と(有)衣裳研究会=神大寺=代表となる。これまでに和裁団体などの重職を歴任。初代横浜マイスター(1996年)や現代の名工(08年)に選ばれたほか、黄綬褒章(09年)などを受賞しており、200人を超える後進を育ててきた。
「蚕を育てるところから多くの職人を経てできた反物は、仕立てによってより素晴らしいものともなれば、駄目にしてしまう場合もある」と、着物作りで最後の工程を担う和裁士の責任の重さを語る鈴木さん。自ら着付け指導も行い、和裁士の視点で着物の魅力発信に努めている。
また、創作研究にも力を注いでおり、『陽炎仕立て』『切嵌象嵌(きりばめぞうがん)』といった独自の技法を生み出している。11月に横浜高島屋、12月には衣裳研究会で展示会を予定。「どんどん広く発信していきたい。いつか世界文化遺産に『和裁』が登録される日が訪れれば」と夢を描く。
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