漁師たちが作った会社の2代目社長として街づくりに取り組む 鈴木 武さん 七島町在住 56歳
子安の海を再生したい
○…子安浜は、江戸時代から続く漁師町だ。埋め立て事業や海洋汚染の影響で廃業を余儀なくされた漁業組合の役員が、1972年に転業対策として警備・清掃業に携わる会社を設立。ビルメンテナンスにも着手し、順調に成長を遂げてきた。「先代は漁師たちの生活を守る責任と重圧の中で転業に踏み切った。その想いを受け継ぎ、2代目として600人の従業員らと共にサービスを提供している」
○…生まれも育ちも子安。東浜の漁業組合長だった父の背中を見て育った。夢は漁師。休日ともなると、魚の加工に精を出していた少年時代。浦島丘中では野球部に所属し、長島茂雄さんに憧れ白球を追いかけた。「同級生は、荒っぽい連中ばかりだった」と笑う。ちょうどその頃、漁師の廃業話を聞かされ、目標を「船乗り」に変更。三崎水産高校へ進学し、専門知識を学んだ。
○…海運会社に就職すると、船の荷積みの立会いを任された。「船長や荷役の人たちといかに円滑に仕事ができるか、そのことばかり考えていた」。コミュニケーションの大切さを学び、5年後に現在の会社へ。現場主義を貫き、警備や清掃に汗を流した。春になると、桜の見物客で賑わう野毛山動物園のごみ拾いを思い出す。「若かったので、とても恥ずかしかった。だから、今でもお花見は嫌い」
○…妻と2人の息子と暮らす。趣味はゴルフ。対外的には、「世界の美港都市横浜を創る協議会」の一員として、子安浜の新しいまちづくりに取り組む。「砂浜や海岸を戻すことは無理でも、昔のきれいな海を再生したい」。水路を市民が触れ合える場所にすることなどを目指し、活動を本格化させている。転業企業の成功例として、今年の区民ミュージカルの題材にも選ばれた。「過去があって今がある。子どもたちには子安の漁師町の歴史を学びながら『諦めなければ成功できる』ことを知ってもらいたい」と期待を込める。
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