三師会会長、地域医療を語る 少子高齢化が進むにつれ、全国的に財政危機下における地域医療の重要性が高まっている。そこで、本紙では神奈川区内の三師会(医師会・歯科医師会・薬剤師会)の会長に鼎談形式でインタビューを行った。3人の会長はそれぞれ、会長就任からこれまでの成果や課題、最近の医療現場を取り巻く現状などを総括。三師会の枠組みの下で連携を強化することを相互に確認しあった。
――まずは、2013年を振り返ってください。
矢島 一般社団法人への移行業務を遂行してきました。災害時救急医療については、地域行政と緊密な連携のもと、会員全員の出動を基本に組織作りをして、区民の皆様の安心を確保できるようなシステム作りをしています。一方で、地域完結型の医療体制の構築については、人的要因もあり、まだ行政の求めるレベルには達していない状況です。
西山 「神奈川在宅緩和医療研究会」という区三師会独自の会が発足し、積極的に医師会や薬剤師会、看護師などとつながることで地域医療のネットワークが少しずつ確立できてきていると感じています。歯科医師会としては、商店街と連携した取り組みも初の試みとして準備が進んでいます。
渡辺 医薬品のインターネット販売が話題になりましたが、薬剤師会としては反対の立場。医師・歯科医師が出した処方箋をきちんと精査し、知識を患者にフィードバックするのが薬剤師の仕事です。以前はただ処方箋通りにやればよかったが、今は医療人としての独立した役目を与えられています。例えば、医師が間違っていた場合に指摘しないと、自分たち自身が罪に問われます。
――各会の主な取り組みと環境の変化について教えてください。
矢島 日本医師会の取り組みを、地域に落とし込むことが課せられた使命です。「地域包括ケアシステム」や「防災」の取り組みを完結させる一方で、開業サポートとして、会員の懇親を図ることも重要だと思っています。西区で「地域包括ケアシステム」が昨年11月から試験運用されています。神奈川区は24時間対応に課題が残ります。医療制度改革などが叫ばれていますが、人材さえいれば制度は関係ない。医療は人です。
西山 大口通商店街の近隣歯科医が、商店街のキャンペーンに参加する準備を進めています。これをきっかけに、区内の様々な商店街や地域で歯科医とのつながりができればいいですね。2月16日には5回目となる「口腔がん検診」を実施します。在宅医療のニーズが高まっているのを感じます。会員の歯科医にも在宅診療を始めるところが増えつつあるようです。
渡辺 薬剤師会も在宅医療への対応を考えています。現在は、主に看護師が医師に同行していますが、薬剤師も現場に行くべきでしょう。直接患者に会い、「表情を見る・声をかける」だけでも違う。安心感や信頼感が生まれ、より深いコミュニケーションを取ることができるようになるからです。しかし、店舗の営業だけで手一杯のところが多く、なかなか実践できていないのが現状です。
――三師会の連携についてはいかがでしょうか。
矢島 他の地域と比べても良好な関係を築けていると思います。顔を知っているだけでも違うと思いますので、これからも緊急時には、電話一本で連携できるような環境作りをしていきたいです。
西山 「顔が見える三師会」を意識し、定期的に会っています。現在は、災害時に三師会が地域や行政などとどのように連携して対応していくかなどを話し合っています。高齢化社会が進む中で、歯科受診がなかなかできない人が増えてきています。患者さんが服用している薬のことなどもあるので、薬剤師の先生とも連携していきたい。
渡辺 在宅医療などのテーマで合同勉強会を行いたいです。また、新しい医薬品ができたときには一緒に勉強会をするなどの情報共有が大切。異なる立場から意見を出し合うことで客観的視点を加えることができます。そのためにも、普段から顔を合わせた関係が必要ではないでしょうか。
――最後に今年の抱負と展望を教えてください。
矢島 従来は通院や入院などの「かかりつけ医」が一般的だったが、最近は訪問診療スタイルの「在宅専門医」の存在感が増している。区医師会としては、両者が共存できるような舵取りを行っていきたいです。
西山 患者さんが診療所まで来られなくなったときの対応を考えて、三師会のネットワーク形成をもっと進めないといけないと感じています。歯科医師会としては「噛むことの大切さ」を区民へ伝えたいですね。三師会の連携で高齢化社会を楽しいものにできればうれしい。
渡辺 患者さんにとって顔の見える薬剤師を目指します。ただ薬を作っていれば良いという考えではダメ。人に伝えていくことが大切です。これからは様々な場所で講演会などを積極的に行うなど、存在をアピールしていく必要があります。
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