区内野川と高津区千年にまたがる「橘官衙(たちばなかんが)遺跡群」が今年3月、市内初の国史跡に指定される予定となった。同遺跡群に含まれる「影向寺遺跡」は野川東耕地の高台に位置する。国史跡指定が予定されている中、地元では文化財の国宝認定を望む動きも活発化している。
威徳山影向寺(野川419)は南関東地方屈指の古刹。寺伝では聖武天皇の勅願で740年頃建てられたとされていたが、近年の調査で出土した古瓦の様式から更に古く7世紀末頃に創建されたと考えられている。武蔵国橘樹評の隣に位置する荏原評の瓦が使われていたことから、橘樹郡の郡寺として公的な性格をもって発展してきたとみられる。
本堂の薬師堂(県指定重要文化財)や本尊の木造薬師如来両脇侍像(国指定重要文化財)をはじめ、23体の仏像彫刻、古文書類、民族資料が多く所蔵されている。
国史跡指定への動きについて影向寺重要文化財保存会の小泉一郎会長は「貴重な文化財があることを周知して、多くの市民に足を運んでもらいたい」と話した。
また、区内有馬の有馬療養温泉は「有馬西明寺の霊泉」「誠の泉」として古文書に記され、影向寺にゆかりのある温泉として知られる。有馬療養温泉旅館3代目の安岡一剛さんは「隠れていた川崎の深い歴史を紐解くきっかけになるのでは」と話した。
「薬師三尊像を国宝に」
影向寺重要文化財保存会では、文化財の保存管理や年中行事の企画運営に加え、薬師如来両脇侍像(薬師三尊像)の国宝認定に向けた活動に力を入れている。
薬師三尊像は明治35年に国宝に認定されていたが、昭和25年、文化財保護法の見直しと再調査によって国宝から外され、国の重要文化財となった。「再び国宝に」と署名活動を続け約5年。現在2万人近くの署名が集まっている。同保存会事務局長の加藤虔裕(けんゆう)さんは「まだまだこれから、さらに協力を呼びかけていきたい」と話す。
また、同保存会では若手不足も問題となっている。現会員は野川と高津区千年を中心に約300人。「広く会員を募るためにも組織形態や普及方法について考えていきたい」としている。
今後の具体的取組や遺跡の保存・管理については国史跡指定の告示後、理事会が開催され基本方針が定められるという。
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