飼育されている牛に着けられている「鼻輪」。本来は牛にいうことをきかせるためのものだが、その鼻輪に生体情報を検知するシステムを組み込み繁殖や健康管理に役立てようという研究開発が、区内宮崎に本社を置く「(株)協同インターナショナル」(池田謙伸社長)と岩手大学との産学連携で始まった。
この研究は、同社が市の産学共同研究開発プロジェクト補助金を活用し、岩手大学と連携して進めているもの。同社が市内企業と連携し製品開発のハード面を、同大が実証実験と研究というソフト面を担当し、牛の繁殖や健康管理における農家の負担軽減を目指す。
同社が今回取り組む事業は、牛の鼻輪に着目した製品開発。牛は鼻が一番弱いことから、鼻輪を着けそれを引っ張ることで痛みからどんなに気性の荒い牛でもいうことをきくため、昔から鼻輪が着けられてきた。
現在「和牛」人気もあり肉用牛の繁殖に取り組もうという農家が増えている。しかし現状、種付けのタイミングを計るための発情行動等は目視で判断されており、さらにその行動は12時間から36時間に及ぶことや、深夜帯が多いこと、また飼育頭数の多さなどの理由で監視の目が行き届かず、発情の兆候を見逃したり、種付けのタイミングを逸した結果、次の発情までの餌代などの経費が嵩み、経営を圧迫。やめてしまう農家もあり、繁殖農家の減少による出生頭数の減少が和牛の高値にもつながっているという。
そこで今回行われる研究開発は、牛の飼養農家等が切望する発情情報の検知や病気の早期発見を目指す。
体温・血流センサーを鼻輪に装着
具体的には、牛の体温や血流を測定するセンサーと無線モジュール、GPS等を備えた「鼻輪」を開発し、これを牛の鼻中隔に装着することで、リアルタイムに生体情報が得られるようにする。さらにその情報を無線を通じて情報端末に送信、個体単位での管理を可能とする。
同社産学共同研究プロジェクト研究室の三田正弘技術次長は「本システムにより、過去の履歴と比較することで次回の発情の時期を予測することが可能になるため、計画的で適切なタイミングでの種付けが可能になるほか、現在の体温や血流等の生体情報が得られることで、病気の早期発見と感染症の拡大予防に役立つ」と話している。
牛の体温測定は肛門に体温計を挿入し直腸温を検温するのが一般的だが、この方法は農家にも牛にも負担とストレスがかかるため、これに代わる方法の開発が以前から待たれていた。このシステムが完成すれば、検温時の農家の負担軽減、衛生面での改善だけでなく、飼養農家、獣医師、受精師らの労働環境の改善にもつながるという。
来年度製品化へ今月から始動
開発の主なスケジュールは、岩手大学が所有する牛を使い、今年7月から8月にかけて牛が動いてもセンサーが適切に働くような鼻輪の形状や配置を図るためのデータ取り、秋にセンサー等を埋め込んだ試作品を製作。来年早々には試作品を牛に着けて春まで不具合等を精査し、来年度の製品化に向けて動いていく。
(株)協同インターナショナルが鼻輪の製品化を進める一方、連携する岩手大学では、子牛と成牛を用いた実証実験を行い、深部体温と鼻輪温度との整合性や精度、発情や分娩時期、病気との相関の研究を進めていく。
関係者らは「本システムによる生産性の向上は、消費者が購入する牛肉価格の高騰を抑制し、国民の生活の安心にもつながるはず」と期待を寄せている。
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