市民や事業者らを対象に無料で行われてきた「応急手当講習」が、4月から有料化となった。これは、主催する川崎市消防局が(公財)川崎市消防防災指導公社に事業委託したため。講習を務める署員への負担が重く、本来の業務に影響する可能性があることなどが主な理由だが、有料化となった4月の依頼数は減っているという。
応急手当講習は、心肺蘇生法やAEDの使用法、止血法など、救急患者の救命に必要な応急手当の知識や技術を市民らに身につけてもらうために、市消防局が1994年から実施してきた。「一家に1人の市民救命士」のスローガンを掲げ、講習修了者の称号となる「市民救命士」は23年間で36万人超誕生している。
しかし、講習の需要が多い一方で、講師を務める消防署員への負担が課題となっていた。本来の業務である緊急時対応や救急隊員への教育なども、限られた人員と時間の中でやりくりする必要があり、実際に講習中に緊急出動したケースもあったという。
こうした理由から、市消防局は今年度から講習実務を民間委託することを決めた。委託先の川崎市消防防災指導公社は、防災啓発や防火・防災に関わる各講習などを手掛けている法人。「市民救命士」の講習は、これまで平日のみ開催していたが4月から土日祝にも拡大し、受講者を増やしていきたい考え。また、これまで無料だった講習を有料化し、普通救命講習/800円、上級救命講習/1000円など、教材費を受講者が負担する。
受講者減を心配する声も
しかし、「有料化」の影響からか講習の依頼が減っているようだ。公社によると、今年4月の講習依頼数は昨年の4分の1程度に留まっているという。例年、海やプールなど救命救助の必要性が高まる夏にかけて受講者が増える傾向にある中で、地元の消防団員からは「今までの取組みが後退してしまうのでは」と不安の声も聞かれている。
広報を担当する市消防局では「しばらくは受講者数が落ち込むかもしれないが、消防関係のイベントや地域の様々な行事など、あらゆる機会を通じて市民救命士の必要性を訴えていきたい」としている。
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