マジックで防犯を呼びかける宮前警察署生活安全課巡査部長 笹村 克己さん 横浜市在住 60歳
犯罪を少しでも減らしたい
○…「記憶に残る防犯講話をやりたくて」。宮前警察署生活安全課に着任して10年、得意のマジックで地域住民に防犯を訴えてきた。マジックを使うことには意味がある。増加する振り込め詐欺被害。「例え顔が見えていてもタネ1つで人は簡単に騙せてしまう。顔の見えない犯人ならなおさら」と訴える。講話では見事な手品で参加者の目を引き、詐欺の手口や注意点を伝える。「話術も重要だよね」。ユーモア溢れる口調も名物だ。
○…手品との出会いは大学時代。同級生に誘われて訪れた大学の代表者が集う関東奇術連盟の発表会だった。人を驚かせ、喜ばせる技術に魅了され、その日の内に大学のクラブに入った。「それから4年間はマジック漬け」と苦笑い。プロにならなかったのは身の丈を考えて。ただし、これまで身に着けたタネは楽しい驚きを届け続けている。「見に来てくれた人の笑顔がたまらない」と目を輝かせる。
○…大学卒業後、警察官に。少年時代、悪さをした自分と真摯に向き合い、正しさを教えてくれた警察官が心に残っていたからだ。以来37年、刑事課、地域課、現在の生活安全課と渡り歩いてきたが、一貫して大切にしてきたのが「相手に丁寧に耳を傾けること」。「それを求めている人がたくさんいるから」。少年時代の自分を思い浮かべたのか、優しくほほ笑む。
○…来年4月に定年を迎える。それまでは「少しでも犯罪が減るように」と防犯講話を続けていく。犯罪者を捕まえることとは違い、被害を防ぐことは形としては表れない。しかし、「平穏であるということは被害にあって悲しむ人がいないということ。それがやりがい」と語る。鮮やかなトリックで人を驚かせるマジックだが、その一瞬を作るのは地道な練習の積み重ねがあるから。防犯も同じ。「万が一に備えて地道に訴える」。そう語る口調にはタネも仕掛けもない真っ直ぐさが宿っていた。
|
|
|
|
|
|
3月22日