江戸時代から川崎や世田谷を中心に関東西部で生産・製造され、庶民の味として広く親しまれた「武州茶」。戦争・震災や戦後の街の発展で、一時は途切れ、「幻のお茶」と言われたその味を全国で唯一復活させたのが高津区溝口、大山街道沿いの「田中屋」(鈴木清代表)だ。
1760年に武州橘樹郡高津村溝口宿に開業した田中屋。当時は店舗裏手や現在の宮前区にも茶畑があり武州茶を自園自製していたが、関東大震災で工場が倒壊し、製造を続けることができなくなった。
しかし、武州茶の復活を強く願った9代目の鈴木清次氏が復原に挑戦。亡くなる直前まで味の記憶を頼りに推考を重ね、3年前に「武州茶」を復原させた。狭山茶を主に、静岡茶で香味を加えたお茶は、飾り気のない実直な味ながら、飲みごたえのあるうまみを持った力強さが特徴だ。同店の鈴木千鶴さんは「父からは『このお茶は江戸時代から日常的に庶民に親しまれたものだったことを忘れるな』と何度も念押しされました」と話す。その教えを守り、求めやすい価格で販売。ラベルに記された”温故知新”の言葉に思いが込められている。
家庭で急須を使ってお茶を入れる風習が廃れてきている昨今。同店ではお茶の文化を後世まで伝えたいと保存してある蔵や店内を改修してお茶の歴史などを展示する資料館開設を来春に予定している。「5月中旬には4年目となる武州茶の新茶ができあがります。その他にも様々なお茶をご用意しておりますので、多くの方に本当の味にふれていただけたら」
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