83歳で市立高津高等学校定時制(久本)に通い、野球部員として試合に出場した上中別府チエさんは昨年末、『83歳の女子高生球児』を出版。全国から感想が寄せられるなど反響を呼んでいる。高校卒業を3月に控える上中別府さんを取材した。
上中別府チエさん(宮前区有馬在住)は定時制の4年生。野球部監督で担任の中島克己教諭から誘われ、野球部に入部した。83歳という年齢ながら、昨年6月に開かれた軟式野球神奈川県大会に部員として出場、守備や伝令役をして活躍した。チームは準優勝を収め、『元気なおばあちゃん』『83歳の野球部員』として、メディアで取り上げられた。
昨年11月には、中島教諭の勧めもあり「83歳の女子高生球児」(主婦の友社/四六判256ページ/定価1365円)を出版した。同著書は上中別府さんの生い立ちや15歳で終戦を迎えるまでの記憶、約60年ぶりに学生に戻った経緯、そして勉学に取り組み野球部員として活躍した高校生活などが綴られている。
出版後も上中別府さんは「いつもと何も変わらない。『チエさん本買って読んだよ』と言われると嬉しいですけど」と普段の高校生活そのままに自然体に過ごしているという。
中島さんは「チエさんのすごい所は、野球をしていることだけではない。元気に授業に出席する姿は私たちが学ぶことも多い」と話す。
「勉強」への思い
鹿児島県出身の上中別府さんが青春時代を迎えたときは、日本中が戦禍にまみれ学校どころではなかったという。結婚後は、子育てに追われて勉強が出来ず、「娘に勉強を教えてあげることが出来なかった後悔がずっと心にひっかかっていた」と語る。
そこで上中別府さんは76歳の時に英語を学びたいと夜間中学に入学、卒業後は高津高定時制に入学した。本では「今の子ども達はあたり前のように学校に通っているが、勉強できることがどんなにありがたいことかを伝えたかった」と語る上中別府さん。テレビを見た人や本の読者から「感動して涙がでた」「教材に使いたい」などの手紙が寄せられているという。
卒業後も意欲的
3月1日の卒業式で学生生活を終える上中別府さんは「校門をくぐれば10代の気分になった。同級生とは冗談を言い合ったりして、友達と思ってくれている」と楽しい学生生活を振り返る。パワーの源は「意欲を持ち続けること。やる気はトップクラスだと思います」と胸をはる。「卒業後は書道や水墨画、絵手紙などの趣味を楽しみ、水泳も続けたい」と元気いっぱいに答え、「一緒に卒業する60歳ほど年下の同級生が『遊びに行くよ』『結婚式に呼ぶね』と言ってくれて嬉しかった」と笑顔で話した。
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