高津物語 連載第九〇八回 「踊る島・沖縄」
岡本太郎は見た。
「歓声のど真ん中に、女が飛び出して来た。
粗末な木綿のスカートにひっつめ髪、飼い主らしい中年のおばさんだ。笑み溢れた顏、ひょこひょこと手を振り上げ、足を踏む。アッと思うような姿で、牛に正対して追っては、つと離れ、軽やかに廻る。
それは私が沖縄で見たすべての踊りの中で、最も純粋で、直接的なエキスプレッションだった。
もちろん、少しも儀礼的なものではない。本当にうれしくてたまらない。みんなと喜び合う気持ちが自然とあふれ出てくる。表現、ひどく素直な肉体のリズムであるということはすぐわかった。だが、このような踊りの感動は、言いかえれば、生きるアカシの儀式化もしれない。人は生きるために、如何に耐えなければならないか。だからこそ、生きるよろこびが証し立てられなければならない。
その時生活と踊りはまさに一体であり、殆んど生きる事の儀式と言って良い様相を帯びるのではないか。
芸術の本質がまたそこに暗示されているだろう」(『沖縄文化論―忘れられた日本』岡本太郎著・中公文庫)
田園都市線高津駅下りホームにも、ノクテイ・プラザ十一階の高津市民館ロビー壁面にも、岡本太郎のレリーフ作品『高津』(一九八八・陶板で製作)が掛る。
「清らかな多摩川の流れ
遠く大山詣りの人々を
惹きつけてそびえる山
そして一筋の往還、ながい歴史、生活の厚みがそこに象徴されている
高津は母、岡本かの子の
故郷だ。
私にも幼時からの、
濃い思い出がある。
まだ橋の架かっていなかった多摩川を、母と一緒に
渡し船に乗って越えて行くと
今「かの子の碑」の建つ
二子神社の下の河原に
親戚の人たちが揃って
迎えに出て手を振っていた
その光景が今でも嬉しく
思い出される。
此絵は私の心に凝縮された懐かしいふるさと高津である。 岡本太郎」
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