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高津区版 公開:2017年7月14日 エリアトップへ

高津物語 連載第一〇〇四回「疱瘡(ほうそう)の脅威」

公開:2017年7月14日

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 江戸時代、死亡率が異常に高かった疫病は、疱瘡(天然痘)だった。急激な発熱と頭痛、筋肉痛に嘔吐(おうと)を伴い、発疹が体中に広がった。

 疱瘡は感染すると死亡率が異常に高く、体力のない老人や子供が犠牲になった。

 たとえ死を免れたにしても酷い痘痕(とうこん)が残り、この為、不縁をかこったり、失明した座頭や鼓女(ごぜ)になる等、過酷な運命を強いられた。

 この恐ろしい伝染病を、痘瘡、または天然痘ともいった。

 その他、麻疹(はしか)・流行風邪(インフルエンザ)・コロリ(コレラ)・労咳(ろうがい)(肺結核)が流行した。

 戦時中、薬も医薬器具も不足する時代に、漢方医学で急性熱性疾患の総称、償還(しょうかん)、今の腸チフスや痢病(りびょう)(赤痢)が流行した。腹痛や下痢が激しく、飴状の排泄物を出す伝染病で、赤痢の類で小さな幼児が次々に死んでいった。

 日本には、天平七年(七三五)に大陸から浸入したのが最初で、何回か大流行が繰り返され、江戸時代に入ると、絶えず流行するようになり、当時の日本人の死亡率のトップを占めた。

 小林一茶『おらが春―露の世』で「笑へ笑へ今朝からは二つになるぞ今朝からは」と喜んだのも束の間「二葉ばかりの笑盛んなる嬰児(ちご)を、寝耳の水の押し来る如き、荒々しき痘(とう)の神に見込れつつ、今水膿(すいのう)の最中なれば、やおら咲ける初花の泥雨に萎(しお)れたるに等しく、側に見る目さへ苦し気にぞありける」と誕生日も束の間「朝顔の花と共にこの世も萎(しぼ)みぬ」と疱瘡で逝(い)った我が子に慟哭(どうこく)する一茶。

 「疱瘡に稚児の着ている緋(ひ)の衣」と、「赤づくめ」にすれば軽く済むと考え、この頃から江戸では雑司が谷の鷺大明神に、病魔を払うお供えの達磨が山積みにされる習慣が出来たという。

 疱瘡が伝染病だと医者間で認識されるのは、浸入から千年も経た文化七年(一八一〇)の事である。

 又、天然痘が地球上から姿を消すのは、一九八〇年(昭和五五年)で、天然痘に罹れば即死を覚悟した時代の恐怖感を思うとき、医学の進歩に脱帽するのみである。
 

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