登戸研究所を題材に児童文学「君たちには話そう かくされた戦争の歴史」を執筆した 石井 ゆみさん 麻生区在住
埋もれている真実を知って
○…高校生が細菌兵器や風船爆弾、偽札づくりなどの実態を解明し、戦争の闇に迫った――。そんな事実に心が突き動かされた。今年7月に上梓した児童文学『君たちには話そう かくされた戦争の歴史を』(くもん出版)は、太平洋戦争中に旧日本陸軍が開設した登戸研究所の実態を明らかにした高校生を描いたノンフィクション。「この事実を長年かけて調べてきた人たちがいることを、たくさんの人に知ってほしい」
○…「ノンフィクションなので事実確認が大変だった。4キロ痩せた」。登戸研究所の実態解明は、1980年代から市内の高校生や市民が調査を進め、実態が少しずつ分かってきた。執筆にあたり、40代になった当時の高校生や指導した教員への取材を何度も重ねた。作品がなるべく暗い雰囲気にならないように気をつけ、「とっつきやすさ」を重視した。「知らなければいけない事実がある。みんなに読んでもらって登戸研究所のことが初めてわかったといわれると嬉しい」
○…日本児童文学者協会の会員。幼いころから本が好きで、小中学校の時は学校の図書室に行くのが楽しみだった。当時は『赤毛のアン』などの海外の児童文学を翻訳したものが多く、日本の児童文学は数少なかった。「小学生のころから、いつか私が書いてみたいなと漠然と考えていた」。執筆活動を始めたのは子育てを終えてから。大学の講座で学び、07年には『無人島で、よりよい生活!』(岩崎書店)で福島正実記念SF童話賞大賞を受賞した。
〇…日頃から「本になる面白いものはないか」と常にアンテナを張っている。本や新聞はもちろん、図書館で様々なジャンルの本棚の前を歩く。生涯の執筆本が1冊という作家が多い中で「せめて、もう1冊出したい」と考えていた。「登戸研究所との出会いに感謝している。今もまた、もう1冊出したい気持ちになってきた」。次の題材探しはもう始まっている。
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4月19日