市柔道協会の中で現在区内唯一となる七段に昇段した中原柔道館在籍の柔道家 西村 元一さん 区内小杉陣屋町在住 77歳
柔(やわら)の道”一本”貫く鉄人
○…「自分が七段になるとは夢にも思わなかった」。六段昇段から16年目の快挙。市内で一握りの七段となった。過去の試合経験の多さが評価された。恩師である中原柔道館の故・及川金三郎館長の教えで、柔道の総本山の講道館をはじめ、各地で試合を行ってきた。「いやいやな気持ちもあったが、まさか後になって評価につながるとは。七段になれたのは金三郎先生のおかげです」と感謝する。
○…柔道を始めたのは中学1年から。兄のように慕っていた家業の店の従業員に連れられ、新丸子の同館の門をたたいた。付き添いで乗り気ではなかったが、身体が他人より小さく細かったため両親に「柔道で鍛えろ」と言われていたという。「でも金三郎先生には一目見て『こんなか細い子は3日でやめるだろう』と言われてしまってね」と苦笑い。しかし、厳しい稽古を続けるうちに身体ができ、柔道が面白くなっていった。「先輩がいい人ばかりだった。大きい人を投げる楽しさを教えてくれたよ」
○…柔道一筋65年。ずっと同館で修練してきた。「道場での稽古は部活より楽しかった。それは様々な年齢・職業の人がいるから。学校と違っていじめなんてまったくなかったよ」。金三郎館長には柔道以外でもお世話になった。「先生は旅行が好きでね。門下生みんなで行く旅行も楽しみの一つだった」。昭和25年ごろは町道場が盛んな時代。「地域の人はたいてい通っていたなあ。住民の交流の場だった」と懐かしむ。
○…激しい柔道とは対照的に、性格は温厚そのもの。人となりを知る人は一様に口をそろえる。燃料店の2代目。後を息子に継ぎ、今はのんびり暮らしている。趣味はお酒。「柔道の後に飲む酒は格別だね」と頬をゆるめる。今では滅多に胴着に手を通すことはないが、道場には時々審判として顔を出している。「誇りは長く続けてきたこと。途中で投げ出しちゃだめ。続けることが大事」と鉄人は語る。
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4月19日
4月12日