第38回全日本短歌大会で優良賞と奨励賞を受賞した 松原 佳江さん 下新城在住 83歳
命の尊さ 31字に込め
○…「胸に組む 母の手白し 辛かりし 時代を7人 育てくれし手」。母親が亡くなった時を思い出して詠んだ歌が、全日本短歌大会で優良賞に輝いた。歌には戦中戦後に育ててくれた母親への感謝が込められている。選者からは情景が浮かび、胸に響くものがあると評価された。「賞をいただけることは素直に嬉しい。親子の絆は心の自然の動き。人に喜んでもらえる、印象に残る歌を詠んでいきたい」と喜びを語る。
○…上新城の農家に7人きょうだいの長女として生まれた。小学生の頃は戦時中で、川崎大空襲の爆撃で自宅が焼けた。「着の身着のままになった、あそこが私の人生のスタート地点」と当時を振り返る。苦しい中で稼業を手伝い、きょうだいの面倒を見ながら学校に通う日々。後に母親から言われた「おまえには苦労させたな」という言葉が今も耳に残る。結婚後は定食屋を営みながら3人の息子を育てた。「苦しみがあるから喜びがある。人生は波乱万丈。あの頃のことは私の血肉になっている」
○…短歌を始めたのは子育てが一段落した48歳のころ。きっかけは「近所の友達に誘われたから」。今では35年続くライフワークとなった。所属する中原短歌会では、10人ほどの仲間たちと月1回のペースで勉強会に励む。「皆さんが一生懸命取り組んでいるから影響を受けた。1人だったらここまで続けられなかった」と言い切る。家族や戦争を歌の題材にして、命の尊さを詠むことが多いという。「人生に暗たんとした時期もあったけど、平たんじゃなかったから詠める歌もあるのかもしれない」
○…今回を含め、これまでの受賞作品は20点以上にのぼる。第32回の同大会で、3大タイトルの毎日新聞社賞を受賞した経験も持つ。「大切なのは感動すること。感動がなければいい歌は生み出せない。日常生活の中で歌にしたい、頭の中にキラッとするものを探すの」と穏やかに目を輝かせる。
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4月19日
4月12日