古沢の古澤荘一さん 伝統の「虫送り」を再現 農家の風習を現代に
区内古沢の農家・古澤荘一さん(85)らが農家に伝わる古い風習「虫送り」を再現する試みを行っている。明治時代頃をさかいに、全国で姿を消した農家の風習を現代に蘇らせようという取り組みを取材した。
「虫送り」は夏場に増える蛾などの害虫を駆除する目的で明治時代頃まで全国で行われていた。形式や手順は地域によって異なるが、多くは7月下旬から8月初旬にかけて行われる。松明を稲穂にかざすようにしてあぜ道を練り歩き、虫を追い出した。
「虫送り」は農薬がなかった時代に、害虫による被害を食い止めようと農家の人々が考え出したという説と、五穀豊穣を祈るための儀式だったという説が一般に知られている。麻生区内には、片平に住む古人が詠んだ虫送りの歌が残されており、明治時代頃までは区内の農家でも虫送りが一般的に行われていたことをうかがい知ることができる。
古澤さんは家族や自分たちの畑で行っている体験農業の参加者らに声をかけ、昔ながらの方法で「虫送り」を再現した。
古文書参考に復活
この風習は荘一さん(85)の幼少期にはすでに行われなくなっていたため、再現には害虫駆除の方法について記された古文書「除蝗録」を参考にしたという。
同書には、虫送りに松明が用いられていたことや、太鼓の音で虫を追い出したことなどが記されている。村ごとに集まり、隣村との境目に建てられている庚申塔目がけて虫を追い出した。村人総出で行われるため、団結が求められる行事だったという。
古澤さんらは松明に見立てた棒や太鼓を担ぎ、あぜ道を練り歩いた。炭坑節を虫送り用に替え歌にし「むしが〜でたでた〜むしがでた」と歌うなど独自のアレンジも加えた。
古澤さんは「除蝗録には蛾のほかに青虫に鯨の油が用いられたことが書いてあり驚いた。作物を虫たちから守ろうと知恵を絞った先人に敬意をはらいつつ、農家の暮らしを大切にしていきたい」と話している。
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