開園50年を今年迎える日本民家園(多摩区枡形)で伝統技術の保存、伝承に尽力する市民団体「民具製作技術保存会」、通称「民技会」。わら細工や竹細工、機織りなど後継者不足が課題とされる技術を後世に残そうと、多摩区内外で活動を続けている。
「わらをねじるのって難しい」「途中で切れちゃった」――。多摩区の下布田小学校で先月行われた、民技会によるわら細工づくりの基本「縄ない」の体験授業。わらを横づちでたたき柔らかくした後、両手をこすり合わせるようにねじりながら絡ませ、1本の縄をなう。会員から直接手ほどきをうけた磯谷亜瑠(あんり)君(11)は「楽しいけど難しい。昔の人は大変だなと思った」と感想を口にした。同校で3年前から続く活動だ。
民技会は、人々の暮らしが近代化していく中で急速に失われていく民具作成の技術を保存、伝承していこうと、日本民家園の協力で1973年に発足。会員全員が手仕事で作業を進め、技術を教え競い合いながら実技中心で活動を続ける。会長の中島安啓さんは、大切にする信念の一つに「現代に合わせて民具をアレンジせず、昔の形や技術、機能をそのまま保存していくこと」を挙げる。
道具が持つ機能性も重視
同会はこれまで、手仕事の技術をわかりやすい文章と図解で説明した冊子「民具のつくり方」を46冊編集、発行。各地で教本として使われており、編み方の教えを受けようと遠方から訪れる人も少なくない。「現代では使えないものもあるが、飾り物として作れば、民具が持つ機能性がわからなくなってしまう。当時使われていた風合いや生き生きとした民具をそのまま保存していきたい」と中島会長。
大田区立郷土博物館や江戸深川資料館から体験講座の依頼や時代劇、映画の小道具としてわら細工の制作依頼など、同会事務局には全国各地から問い合わせがあるという。
同園の江中佐知子さんは「貴重な技術が今に伝わっている。昔の暮らしを生き生きと伝える、当園になくてはならない存在」と期待を寄せている。
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