明治大学名誉教授で、私有地の里山を「トカイナカヴィレッジ」として開放する 松本 穣(ゆたか)さん 多摩区在住 72歳
出会いを幸せに変えて
○…「私は日本一幸せな年寄りだと思う」。生田緑地隣に所有する約5千坪の里山を「田舎暮らしを体験できる施設」として開放し、約5カ月。農作物づくりを楽しむ地元住民や手作りの遊具で遊ぶ子ども、農家の食を研究する大学生など、日々多くの人でにぎわう。「いい人がいい人を呼んでくれて、輪が広がっている。毎日が楽しくて仕方ない」。今月にはウナギの養殖、来年には里山体験ができる民泊を始めたいと、構想はとどまるところを知らない。
○…地元で350年、先祖代々「松本傳左衛門」を名乗る農家の11代目として生まれた。市立向丘小・中学校、多摩高校に通いながら、農業の手伝いに明け暮れた少年時代を「部活など無縁だった」と振り返る。そんな自宅の農地に再び目を向けたのは、定年退職した2年前のこと。「畑や山林をうまく利用できないか。漠然と『都市型農業公園』を思い描いていた」。昨年7月、公の場でこの構想を話したことをきっかけに興味を持つ人が次々と。一気に夢が現実のものになった。
○…これまでの人生を語る上で欠かせないのは、命懸けで学び、43年間教員を勤め上げ、名誉教授にまで至った明治大学での日々。「ゼミから5人の五輪選手が出てね」「卒業生の仲人は44人も」「競走部長で箱根に毎年行って」と話は尽きない。「学生にとって一番は悩みを聞いてあげて、ご飯を食べさせてあげること」。教え子との交流が途絶えない理由だ。
○…すべての行動の根源にあるのは、「いかにしてうまいビールを飲めるか」とニコリ。最近は18時に飲み始め、20時には就寝するとか。その分朝は4時に起き、興味のある分野について3時間勉強。「昔からオンとオフをはっきりさせる性格。今は昼がオフだね」。年に数回、妻とともに3人の子や孫たちと集まる時間も大事なオフだ。「神様がご褒美をくれてるんじゃないかなあ」。人生を振り返り、今の幸せをかみしめる。
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