川崎区追分町の青果店「橋本商店」の女将・橋本桂子さんがこれまで3度にわたり、隣接する無人ATMで振り込め詐欺を防いだことが契機となり、神奈川県警はATMが見通せる場所に立地する商店に「振り込め詐欺撲滅対策協力店」のステッカーを交付した。ステッカーを手に「安心して声掛けできる」と橋本さんは喜ぶ。
「いつも利用していない人がATMに入り、しばらくすると待ちの列ができた。『おかしいな』と思い、中を覗いたら、携帯を手にやりとりしていた。扉を開け、声掛けし、警察を呼んだのよ」――。橋本さんは振り込め詐欺を止めた模様を振り返る。別の振り込め詐欺にあいそうになった年配者のケースでは、橋本さんが声掛けをした時点で年配者が実際にお金を振り込んでいたという。橋本さんは咄嗟の判断で犯人とやりとりして時間稼ぎするとともに、警察に連絡し送金をストップさせた。かつて金融機関に勤めていたという橋本さん。そんな経験と正義感が相まって「変だな」と思う人に声掛けを行っているという。だが「見知らぬ人から声掛けされれば、不振がられる」と語る。
年配者を誘い出し、言葉巧みに振り込ませる「振り込め詐欺」が急増している。神奈川県警によると、今年1月から7月までの神奈川県内の振り込め詐欺の被害は前年比で465件増の1109件、被害総額は約22億6300万円(前年比で約4500万円増)に上り、被害者のうち、70代以上が8割を超える。特に、最近は金融機関の職員や警備員のいない町中の無人ATMを振込先に指定するケースが多いこともあり、対策は急務だった。橋本さんの「偉業」を受け、県警は近くの店舗にステッカーを作成し交付することを決めた。
先月23日に川崎警察署で交付式を行い、橋本商店をはじめ、サンエトワール小田店、花友商店、お菓子の立花、和菓子司マルヤ――の5店舗に協力を依頼した。ステッカーを手に橋本さんは「非常にありがたい。警察からの協力要請のもとで声掛けしているとわかれば、今まで以上に信用していただきやすくなる」と喜ぶ。県警によると県内70店舗にステッカーを配ったが、今後も必要に応じて増やしていきたいとしている。
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