建替えが検討される津久井やまゆり園＝19日
元職員による殺傷事件が起きた「県立津久井やまゆり園」（緑区千木良（ちぎら））に関し、同施設を管理する「社会福祉法人かながわ共同会（以下共同会）」と施設の家族会は12日、施設全体を現在の地で建替えることを求めた要望書を神奈川県に提出した。県は９月中に建替えか大規模な改修を行うかの大きな方向性を決定し、工事にかかる予算案などを議会に提出する予定だ。施設全体の建替えを行う場合、現在も同施設で暮らす入居者の転居先を確保していくことなどが大きな課題となる。 （取材は19日時点）
同園では現在、約60人が事件後も生活しており、その他にも約30人が同園の職員と同行し県内の他施設で生活している。要望書によると、県が同園の再生に向けて施設の建替えもしくは大規模な改修が必要だと認識していることを受け、家族会では同会の会員へ意向調査を実施。11日には調査結果を踏まえた会議を開き、家族会の総意として「津久井の地での建替え」と「建替えまでの間の安定した生活環境の早期整備」を県に対して求めた。
要望書の中では、「私達の希望は『これからも、皆そろって新生津久井やまゆり園で暮らして行く』ことです」とした上で、「津久井やまゆり園は私達にとって唯一の暮らしの場です。建替えによる園の再生について、同法人（共同会）と園は持てる力を存分に発揮してやり遂げるものと信じております」と、現在の地での再生を強調した。
共同会も家族会と同じ２項目を県に対し要望。建替えを求める理由として、事件現場となった居住棟を継続して利用した場合、利用者と施設職員の心理的な負担が大きいことを上げた。そして、共同会が同施設を運営し始めた２００５年以降、地元との繋がりを重視し地域の一員としての関係を築いてきたことを踏まえ、家族会と同じく現在の地での建替えを求めた。
転居先の確保など課題
２者からの要望を受けた県は15日の記者会見で「（建替えか改修かの）大きな方向性は収斂（しゅうれん）しつつあるが、その中で課題を整理していく必要がある」とコメント。建替えに向けては、工事期間中に入居者が生活する施設の確保が大きな課題になるとし、「（他の施設で暮らす約30人を含め）現在暮らす90人が安心して暮らせる環境を整備することは容易ではない」と話した。加えて、やまゆり園に勤務する職員が入居者とともに他施設に移動した場合でも、円滑に業務に従事できるよう環境を整備していく必要性があることにも言及した。
県はこれらの課題を整理しながら９月中に建替えか、大規模改修かの方向性を決定し、工事に必要な経費などを盛り込んだ予算案を現在会期中の議会に提出することも検討している。
やまゆり園の近隣に住む40代の男性は同園と地元との繋がりについて、本紙の取材に対し「やまゆり園には、地元の方も多く就労しており、お祭りを一緒に行うなど地域とも関わりの深い施設だった」と話す。現地での建替えの可能性があることについては、「施設が今の場所に存続する可能性があると聞いて安堵している。防犯上の制約があるかもしれないが、建替え後も地域に開かれた施設であって欲しい」と地元での再生に期待を寄せた。
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