区内で総合解体業を営む伊藤農(の)利夫(りお)さん(=今号人物風土記で紹介)が、カンボジアやラオスで地雷撤去の活動を開始して10年の節目となる今春、現地での活動に終止符を打った。火薬学会発破専門部会に所属し、業務上、火薬の取り扱いを専門としてきた伊藤さんはその経験を活かすため、年に4回、1週間から2週間、現地に滞在して現地民による地雷撤去作業の監督から撤去後の地雷原の活用方法の調査まで携わってきた。今後も形を変えて、現地への人道支援を継続していくという。
活動のきっかけは2006年、火薬について学ぶため所属していた、同部会の会長からの「完全に地雷を撤去するまでにかかる期間を、短縮できる方法はないか」という相談だった。これを受け伊藤さんは、カンボジアやラオスなどで地雷や不発弾の処理を行っているNPO法人「JMAS(日本地雷処理を支援する会)」の活動に参加。仕事の合間を縫い、地雷撤去作業に精を出してきた。
ベトナム戦争とその後の内戦の影響を受け、全土が地雷や不発弾に汚染されていたカンボジア。地雷を撤去する上で、同国は地下水が多いため、爆弾で地雷を爆砕する「爆破処理」は、水が邪魔し爆弾が地雷に達しないために適さず、人の手で確実に除去する「人力処理」が最善の方策とされている。こうした中、地雷撤去作業が現地民の就労の場となり、雇用が生まれ、地域経済の循環に繋がっている現状がある。
地雷撤去の方法は、まず地雷探知機で地雷が埋まっている場所を詮索し、そこに赤く塗布した1m50cmほどの木の棒を目印として立てる。次に、ヘルメットやプロテクターを装備した作業員が、60cmほどの棒を地面に刺し、その感覚で地雷か釘などの金属片かを判別。対人地雷は7〜8kgの負荷がかかると爆発するため、慎重な作業が求められる。最後に、出土されて集められた地雷は、まとめて爆破処理されるという。
伊藤さんの活動は地雷撤去作業に留まらず、活動継続のための資金繰りにも広がる。カンボジアから帰国後、自身が所属するライオンズクラブ国際協会からは年に1200万円の協力を受け、作業にあたる現地民の給料や、活動に不可欠な車両、パソコンなどの購入に充ててきた。さらに、同協会を通じて420本の井戸を同国に寄付。活動上の交通費は、現地民の給料が減ることに配慮し、全額自費で臨んできたという。
活動当初は作業チームが少なく、地雷を完全に撤去するまで約60年かかるとされていたが、「JMASの教育や指導もあり、現在は10チーム以上に増えた。およそ20年で撤去作業は終わるだろう」と先を見据える。これまでの道のりを「ただただ人を助けたいという一心で活動してきた」と振り返る伊藤さん。現地民とともに歩んだ、10年だった。
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