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相模原に避難されている方の声 3・11と一言でまとめられてしまうが、被災された方の思いも風景も決して一様ではない。時間をかけてでも一人ひとりに手を差し伸べていきたい 「全部、大切な気がした」―― 羽下さん一家/福島県南相馬市から避難中。南区新磯野在住。昌方さん64歳、昭子さん67歳、朋太さん24歳

公開:2012年3月8日

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次男・朋太(ともたか=中央)さんは、市内の知的障がい者の作業所に通う。3人は温かな雰囲気で、インタビューに応じてくれた
次男・朋太(ともたか=中央)さんは、市内の知的障がい者の作業所に通う。3人は温かな雰囲気で、インタビューに応じてくれた

 もしあなただったら、そこにどんな大切なものをいれるだろうか――。

 行政から渡されたのは、ビニール袋1枚。記憶によれば、「だいたい70cm四方だったかな」。

 福島県南相馬市に住んでいた、羽下昌方(はがあきのり)さん(64)が暮らしていた場所は、3月12日、国により福島第一原発から20Kmの警戒区域に指定された。やっと帰宅が許されたのは、7月になってからのこと。「帰れる」といっても、避難区域に入れるのはわずか3時間。東京電力の職員に積算タイプの線量計を渡され、妻の昭子(しょうこ)さん(67)と一緒に、久しぶりの我が家を訪れた。

 ビニール袋に入れたのは、「位牌」と「住所録」。「それ以外は何も必要のないような気がしたし、いるといえば全部いるような気がしました」。着の身着のままの退避を余儀なくされたため、キッチンの野菜は朽ち果て、無数の虫がたかっていた。愛しいマイホームは、自分たちの”戻る場所”ではなくなっていた。今の住居は、相模原市内のとある男性が無償で貸してくれている。

 昌方さんは海外を中心に活躍している陶芸家でもある。昨年、スペインのプラド美術館で、”評価すべき15の日本人”に選ばれた実績を持つ。個展を開き、その販売で生計を立てていた。「勝手に追い出されて生きていけと言われ、何が国だと感じてしまう。十分な補償をと訴えているわけではない。せめて、仕事だけでも何とかしてほしい」と、穏やかな口調に憤りをこめる。地方自治体から支給される義援金と「東電から送られる変なお金」が、口座には振り込まれて来る。

 原発事故は、仕事のみならず、芸術家としての生きがいを喪失させてしまった。それでもここ5年来、温め続けているイメージがある。今回の震災で、それは更にふくらんでいった。形にしたいのは4つの壁面に、タペストリーのように陶板を飾り付ける大作――。しかし自分が慣れ親しんだ窯で、自己表現をすることはもうできない。「『人の道』をそこに表したいとずっと思ってきました。モノがあふれ、お金ばかりを追い、自分の姿が見えなくなっている人が多いのでは」。制御不能装置を乱立した、そんな人たちのことを言っているかのように、つぶやいた。
 

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