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森氏に聞く"10年先"の大野 ジャーナリスト  「若い街、チャンスあり」

公開:2013年1月31日

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森氏は昨年11月、初めて市内(南区文京)で講演会を行った
森氏は昨年11月、初めて市内(南区文京)で講演会を行った

 昨年20%強だったスマホ普及率が今年中には50%を超えるという。今や、子どもが持つのも当たり前の時代。世の中はたった1年でがらっと変化する――。今年3月には相模大野に新しい大型商業施設が誕生。迫力ある巨大ビルもいつのまにか風景となり、かつてそこにあった商店街の面影はすっかり忘れさられていく。

 10年先の相模大野(相模原)はどのような街になっているのだろうか?本紙では今回、相模原にゆかりのあるジャーナリスト・森健(もりけん)氏=写真にインタビューを試みた(かつて市内に在住)。街を考察する専門家の視点で見た相模大野とは?郊外都市が抱える課題と展望、そして10年先に備え相模大野は今、何をするべきなのか?

―・―・―・―・―・―・

 まずは、「相模大野」という街の印象をお聞かせください。

 ―相模原の統計を見て感じたことなのですが、南区は老年人口(=65歳以上)が比較的少ない街ですね。これは非常に大切な視点で、2年ほど前に所在不明高齢者の問題(亡くなった後も年金を払い続けていたなど)が取り沙汰(ざた)された時、私も地域の民生委員の協力を得て、横浜市緑区や南区などで調査しました。それらの人口の多いところでは老年人口は全体の25%にも上っていました。民生委員に話を聞くと、生活保護者も多いといいます。同じ相模原市内でも、緑区では28%にものぼるようなエリア(相模湖地区・平成24年10月現在)もあります。相模大野は17・6%(大野南地区・同)ですから、全国平均の23・3%(平成23年総務省調べ)と比べても若い人がとても多い街という印象を受けます。

 「若い世代が多い街」のメリットは何でしょうか?

 ―街づくりの基本的なことですが、「若い人と子どもがいること」は欠かせません。 

森さん、大野の未来はどうなりますか? 本紙初インタビュー

 アイデアだけでなく、手で足で具体的なアクションを起こしていかないと、街から全体的な活気は失われてしまいます。次の担い手、街を興していこうとする存在が繋がり合うことで、街の可能性は広がっていきます。

 とはいえ、相模大野にもいずれ、高齢化の波は押し寄せてきます。

  ―僕も相模大野の街が発展してきた姿を知っています。しかし一方で、高齢者や車を持っていない人が外出しにくくなり、利用できる人が限られていくという現 実もあります。以前、新宿の幹線道路のそばを歩いていた時のことです。ワンルームマンションが建ち並んでおり、私はてっきり学生たちが住んでいるのだろう と。しかし、取材してみると、そのほとんどが高齢者ばかりだった。みな繋がりは乏しく、そして3割近くが生活保護を受けている。「高齢者を屋外に連れ出す 仕組み(孤独にさせない仕組み)」が創出できるかも街づくりのカギとなります。

 外出といったら「コンビニくらい」という方も多いはずです。

  ―コンビニはインフラ化していますし、ますます利用する流れは加速すると思います。ローソンで購入時にポイントが貯まる「ポンタカード」を以前調査して分 かったことがあります。レジのところで「からあげクン」やコロッケが置いてありますよね。あれを誰が買っているかご存知ですか?部活帰りの中高生というイ メージですが、実は一番多いのは60代なんです。しかもお店から3〜500m、徒歩で5分圏内在住という結果が出ています。コンビニがスーパー化してき て、そこでちょっと時間を潰して帰る”生活の場所”になっていますよね。

 コンビニの高齢者利用が多いのには驚きです。

  ―もともと相模原は60〜70年代、郊外のドーナツ化に伴い、「東京や横浜に働きに出る男性が暮らす」という形で若いファミリー層が増えました。また、工 場誘致で雇用が増。団地に住む人が増えたのも、60年代前半ぐらいからですが、その世代が現在老齢となって住んでいる。コンビニは周辺への宅配サービスを 行い、ますます生活の一部となり、いいか悪いかは別としても、使わざるを得ない状況になっていくでしょう。

 ところで、森さんは被災地の仮設住宅にもたびたび足を運ばれていますよね。

  ―津波の被害にあった被災地に行くと、まさに人と人とが交流できる場所が減ってしまっていて、なおさら高齢者は外に出なくなってしまっています。買い物に 行っていた近所のお店は津波で流されて今はない。欲しいものがあれば、朝と夜だけ走るコミューターバスに乗り込んで行くか、現地にいるNPO団体に注文を して買ってきてもらうか。そんな風に生活していると、ますます家に閉じこもってしまう。それで、生きていくこと自体は可能なのかもしれないでしょうが、街 にとって、やはりそれだけではだめだと感じます。

 繋がりを作る仕組みが必要ですね。

 ―相模原は一次産業の街ではない ですが、例えば参加型 ”オープンマルシェ”のようなスタイルを作って繋がるのもいいですね。普段商売をしない、一般の人が物を売ったり買ったりする。出店できる代わりに実行委 員を手伝うなどして主体性を持たせる。相模原は郊外都市のため、もともと住んでいた世帯、比較的若い世代、仕事の為に最近入ってきたファミリーや学生な ど、住民層が様ざまです。言ってみれば、知らない人同士の街なわけです。だからこそ、お金の仕組みだけでなく、人を交流させる仕組みは欠かせません。行 政、NPOも交えながら、色んな人が関わり合い、充実した外出(・・・・・・)を市民に提供できるように仕向ける仕組みを作っていくことが大切です。

 老若男女が自然と交われるのが理想ですね。

  ―ただ、今以上に若い人が街に増えてきた場合、「若い人に優しい仕組み」もまた必要になります。全国的にみても、現在ハローワークで仕事を求める件数と、 児童相談所の相談件数は増加傾向にあります。これが示すところは、若い世代が苦しんでいるということ。職場で急に解雇されたり、家庭内で経済的な問題から トラブルが生じたり。行政や商工会がもっと積極的に雇用を増やさないと。繰り返しになりますが、若い人がいないと街は衰退してしまいます。若い人を優遇す る仕組み、例えば行政は、「出産補助金」「住んで5年間は市民税を免除する」など、若い人が住んでよかったと思える仕組みを作る。呼び込みながら、さら に”途切れさせない”方法を考えていく必要があります。

 地域の活性化と言っても、財源をどう確保するかは各自治体も課題としているところですが。

  ―相模原は可能性の多い街です。政令市なだけあり、国からの交付金頼みの地方都市とは財政の状況も違います。歳出(平成23年度4090億円)より歳入 (4190億円)の方がやや多く、交付金の額も少ない部類に入るかと思います。そういう観点からすると、他の地方都市に比べ、相模原は恵まれた状況にある ということです。若い人が多い街で、そして財政的にも比較的余裕のある今こそ、繋がり合う仕組み作りを考える時です。それは街に「大きな建物を建てる」だ けではなく、人が顔をつきあわせて持続できる人間の関係性を育めるような仕組みです。ボーノ相模大野も誰もが利用できるような交通機能があり、また、利用 し続けたいと思うコミュニティの場でなければなりません。

―・―・―・―・―・―・

 森氏は言う。「相模大野はチャンスに恵まれている」。しかし、それを生かせるかは、そこに住む人、利用する人たち次第。コミュニティの形成が、今後10年先の幸せな暮らしを保障してくれるはず。家に引きこもっていては、街は沈んでいく。『書を捨てよ、町に出よう』。

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