さがみはら南区版 掲載号:2017年2月9日号

個展「見捨てられた牛―フクシマより―」を銀座のギャラリーで開く

戸田 みどりさん

新磯野在住 67歳

生命の輝き、伝えたい

 ○…人間の作った原発により被ばくし、殺処分されなければならない牛たち。そんな彼らにエサを与え、守り続けている牧場が福島県浪江町にある。「希望の牧場」―、ある写真家の展示で存在を知り、一昨年、スケッチのために泊まりこんだ。新鮮なエサもなく、人手も足りない。糞尿だらけの小屋で、それでも力強く生きようとする命の輝き。優しい瞳に涙が溢れ、申し訳ない気持ちで必死に筆を動かした。それから2年、ようやく描き上がった作品15点を、2月27日から銀座の井上画廊で展示する。

 ○…「私、いじめられっ子だったの」と屈託なく笑う。厳格な父親のもと、考えること、意見することすら否定され、「今思えば、思考停止状態だったのかな」。仕事の都合で転勤を繰り返したことも内向的な性格に拍車をかけた。そんな少女時代の支えとなったのが、幼稚園の先生が絵をほめてくれたこと。「絵を描くことが唯一、自分を外に表現する手段だったから。救われた気がしたんです」。その後は美術の道にまい進。女子美術大学に進学した。

 ○…24歳で結婚。2人の子どもに恵まれたが、「絵を描くことに没頭するあまり、子育てを疎かにしてしまった」と反省しきり。特に、お子さんに『給食の方が私の料理より美味しい』と言われてしまったことに対して「母親失格です」とうなだれる。それでも昨年には初孫が誕生。毎月1回は顔を見にいくのだとか。「本当に可愛くて美しくて。見とれてしまって、唯一絵にできないモデルです」

 ○…これまでは「水」や「癒し」を題材にすることが多かったが、伝えたいことが変化してきたと感じる。「どういう方向に進むのか、自分でも分からない。ただ、被写体が『描いて』と訴えてくることがある。今回の個展テーマもその一つ。力強くかけがえのない生命を、多くの人に見てもらいたかった」。日本画家として、自身を伝え続ける旅は終わらない。

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