「東京五輪へ向けた街づくり」をテーマに、市民・大学交流会の講師を務める 山嵜(やまざき) 一也さん 女子美術大学 非常勤講師 43歳
新しい価値観で五輪へ
○…2012年ロンドン五輪に計画や建設監理として携わった。その経験を踏まえ、東京五輪で日本は、地域はどう変化するのかを建築家の目線でストレートに表現する。「大事なのはあくまで選手のパフォーマンスであって建築物ではない」。最低限の設備で沸く会場の高揚感を肌で感じ、建築物に頼らない構想力に「大英帝国の懐の深さを知った」と振り返り、3年後の東京に思いを巡らせる。
〇…建築家を志したのは一つの出会いだった。将来の道が見えずにいた高3時、訪れたギャラリー。並んでいたのは建築家・安藤忠雄氏の作品だった。建物やビルといった、いわゆる建築のイメージを覆すアートとの融合に感銘。「これだ」と確信を得て芝浦工業大学へ進み、大学院修了後、挑戦の意を持って渡英。縁あって五輪に携わったのち、13年に帰国して個人事務所を設立。15年から女子美術大学の非常勤講師も務めるほか、執筆や講演活動など多忙をきわめる。
〇…アイデアの着想がいつも頭の中を占めている。目に入ったもの、感じたことをメモしておき、形にする際それらを一堂に集約する。頭を空っぽにできるのは、妻との散歩の時間。自宅の荒川区から銀座までの長い距離をただただ歩く。道中の何気ない会話がリラックスタイムだ。水泳、銭湯に通うのは、「肌身離せなくなっているスマートフォンと少しの間でも距離がとりたくて」と笑う。
〇…東京五輪を「観光がキーとなる」と語る。開催主要地域は準備で追われるが、離れた地域は余力があるはず。「外国人は必ず増える。その流れを地域ですくい取って観光に結び付けられれば自治体主導の街づくりができるはず」と力を込める。去り際、「考え方が変わらないとダメなんだよね、本当は」と続けた。「これまでの価値観を変え、様々な人や他国の意見をとり入れて進めていくべき。そうでないと、真に開かれた国にはなれないから」
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