200年ぶり再版 異色の連句集 女流俳人・五十嵐濱藻の翻刻『八重山吹』
日本文学史上で唯一、女性だけの連歌集を遺した俳人が町田にいた――。女流俳人・五十嵐濱藻の連句集『八重山吹』がこのほど、町田市民文学館と地元の研究会の協働により約200年の時を経て、改訂の上、発行された。
江戸中期、村役人の家の娘として、現在の南大谷に生まれ育った俳人・五十嵐濱藻。女性が旅へ出ることがままならなかった時代に、父・梅夫とともに各地を巡り、句を詠んだという。「当時、旅に出る濱藻を『おちゃっぴい』と表現した歌が残っています。チャキチャキの江戸っ娘だったのでは」と、今回、改訂にあたった「五十嵐濱藻・梅夫研究会」の淺原雄吉会長は語る。
『八重山吹』は、濱藻が33歳から4年半ほどかけて小豆島や中国地方、九州など西国を巡行した際、無名だった女性たちだけで連句を詠み合ったものだ。無名の女性との連歌も、女性だけの連句集も当時は前代未聞の出来事だったという。「当時の女性は行動範囲がきわめて限られており、村の外に出ることは、まずなかった。地方の女性たちは濱藻から非常に刺激を受けたはず」(淺原会長)。だが、同作品の原本は富山県立図書館と岡山市立図書館に残されているのみ。そのためか、濱藻に関する研究は、ほとんど手つかずだったそう。同会は「今回の発行を機に、いろんな人に読んでほしいし、研究のきっかけになれば」と期待を寄せる。
なお、今回の刊行を記念し、同館では1月19日(土)、作家・別所真紀子氏の講演「五十嵐濱藻の旅と作品」を開催。午後2時〜3時半。参加無料。申込みは【電話】042・724・5656へ。
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