「ギャルリー成瀬17」で個展を開催中の画家 浜村 博司さん 成瀬在住 65歳
絵筆で「自分なりの平和運動」を
○…細やかな描写と鮮やかな色彩が強い印象を残す油彩画で、数々の受賞を重ねてきた。2001年には、文化庁の推薦を受け、ドイツ・ミュンヘンに滞在。3ヵ月で30ヵ所もの美術館を巡り、抽象絵画の先駆者・カンジンスキーの研究に勤しんだ。どこか異国情緒を感じさせる色彩感覚の原点は、故郷・長崎の海の中だという。「子どものころ、素潜りをしていた海の底には、色とりどりのガラスや石がいっぱいあった。今思えば、原爆で破壊された教会や洋館の瓦礫も投棄されていたのでしょう」
○…長崎・原爆の祈りをテーマとした200号の大作シリーズ「ナガサキ考」の制作を80年代から続ける。戦後に生まれ、故郷にいたころは、特に関心はなかった。だが、上京後、当時の平和運動に、「原爆や平和が政争の道具にされている」と違和感を抱いたのが転機となった。制作過程では、熱で溶けて歪んだガラス瓶の塊などを自ら実際に再現してみることで、リアリティを追求した。
○…幼いころは、ガキ大将だった一方、絵に関しては、描き始めると「ご飯よー」という声にも、気づかないほど熱中するあまり、声をかけられなくなったほど。美大進学を機に上京。制作活動に励む一方、短大や専門学校で色彩学などを専門に、60歳まで教鞭を執っていた。「子どものころを知る人からは、『先生になるとは』と驚かれた」と笑う。教壇を去り5年になるが、今でも、たまに教え子から連絡があるという。
○…地元・町田での個展は20年ぶり。結婚を機に町田に暮らし、40年ほど。「住み始めたころ、恩田川の桜は指で囲めるくらい細かった」。いまや名物となった大木の成長も、自らのキャリアも「あっという間だった」と振り返る。だが、今でも絵筆を手にすると、寝食を忘れる。「広島には原爆ドームがあるけれど、長崎には、当時の建物は残されなかった。だから、せめて絵で伝えていかなければ」
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