蝋型鋳造作品の彫刻家でギャルリー17に作品を展示している 宮崎甲(こう)さん 小山在住 56歳
創ることからもっと豊かに
○…手の平サイズのものから、アトリエ内の2メートル近くの大型ブロンズ像まで、作品は複雑な形態のものばかり。今まで何体作ったかは見当もつかない。通常、業者に発注することが多いブロンズ鋳造も自ら行い、溶接や木彫り、ときには44tの石を自ら削りにいくことも。「材料いじりが好き。『なんでもや』だよ。自分の好きなようにやりたいからね」。その一部をギャルリーで披露する。
○…アウトドア好きで飽き性な少年だったが、一貫して続けてきたのがモノ作り。「気が短くてね、ずっと自分の作品に納得がいかなかった」。専門分野を絞る美大でなく、教育学部美術科で広く見識を深めた。「正月以外は毎日大学に行っていたよ」と振り返る。「製作魂」の火は勢いを増し、イタリアにも留学。現地の鋳造屋でプロのより高度な技術を学んだ。この頃学生結婚した奥さんとの式もイタリアで挙げ、「大学院を出たら貧しい彫刻家だと思っていたからね。今しかないって」と笑う。
○…「芸術って結局、衣食住の先にあるものなのかなって」。震災時には憤りと自分の無力感を強く感じ、制作の手が初めて止まった。答えはまだはっきりとしないが、現在はその想いを抱え、大学教授として千葉で日々講壇に立つ。自分の教えた生徒がいつか教師になり、子どもたちに「工作の楽しさを伝える」ことが今描く夢の1つだ。「モノがなんでもある世の中には工作が必要。もっと”手を使える”人が増え、ヴァーチャルでない、その先に社会の豊かさがあると思うんだ」
○…作品に多いテーマは自然。趣味の登山で出会った植物や花、苔、景色と空気がモチーフ。独創的な作品は、各方面で評価されるが、まだまだ満足はできないという。「複雑じゃなくもっとストレートに。人に”伝わる”作品を創りたい。それができたらいつかはアトリエで子どもたちに造形教室を開きたいね」。想いを込め、作品を創り続ける。
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