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町田版 公開:2015年1月29日 エリアトップへ

町田市立博物館より【5】   「博物館でバードウォッチング」 学芸員 今井圭介

公開:2015年1月29日

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(左から)コガモ♂と♂のエクリプス、コガモ♀ 1940〜45年、個人蔵作品は羽のふんわり感はもちろん色彩、生活環境など細部まで精密に描かれ、まさに博物画※エクリプス=カモ類の雄が繁殖期経過後、一時的に雌のような地味な羽色になる状態
(左から)コガモ♂と♂のエクリプス、コガモ♀ 1940〜45年、個人蔵作品は羽のふんわり感はもちろん色彩、生活環境など細部まで精密に描かれ、まさに博物画※エクリプス=カモ類の雄が繁殖期経過後、一時的に雌のような地味な羽色になる状態

 町田市立博物館は小高い丘のてっぺんにある。最寄りの「市立博物館前」バス停から歩いて7、8分であるが、バス停から最短コースをたどらず、少し脇へそれると鬱蒼とした林につきあたる。この林に沿った道を歩いていたある日のこと、『コココココ』という音を聞いた。もしかしてと思いながらその方向に目をやると、一羽のコゲラが一心に木を突っついていた。それが音の正体であった。

 コゲラはスズメほどの小さな鳥で平地から山地の林に生息する。近年は都市近郊にも定着して、人家の庭木、公園の樹木などにも見られるようになった身近な鳥である。この林ではコゲラの他にもメジロやセキレイなどの野鳥を目にできる。木の葉をついばむ姿を間近にみることもあった。それから私はこの道を歩くときは速度を緩め、小さな双眼鏡をポケットに忍ばせたりしながら、通勤途中のささやかなバードウォッチングを楽しむようになった。

博物画の鬼才

 さて、市立博物館では今、『博物画の鬼才 小林重三の世界〜鳥学と歩んだ画家』展を開催している。小林重三(1887〜1975)は大正から太平洋戦争の前後にかけて活躍した博物画・鳥類画のパイオニアの一人。もともと水彩の風景画家を目指していたが、鳥類学者・松平頼孝が鳥類図鑑を制作するため画家を探し、小林にそれを依頼したことから鳥類画の世界に入った。風景画を学んではいたが鳥の絵は難しく、なかなか思うように描けなかった。しかし、松平から助言を受けたり、邸内や動物園の鳥を描いたりしながら研究を重ね、やがてその才能を開かせた小林は、まさに生きた鳥を描き、専門家の研究書から一般の図鑑や野鳥ガイドの絵まで幅広く手掛けていくようになった。88年の生涯で60年以上にわたり鳥類画を描き続けた。

 ところで、会場では小林のことを知らずに来館され、展示してある図鑑を見てその画家が小林だったと気づかれる方も少なくない。博物画の絵描きは日本画家や油彩画家のように名が知られることはほとんどなかったのである。小林もまた例外ではない。この機会に知られざる博物画家の仕事とささやかなバードウォッチングを楽しみに丘の上の博物館へお越しいただければと思う。 
 

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