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町田版 公開:2016年8月18日 エリアトップへ

町田天満宮 宮司 池田泉 宮司の徒然 其の16 タマゴダケ

公開:2016年8月18日

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 いかなる食べ物も最初に口にした所謂先駆者またはチャレンジャーと言われる人によって開拓されてきた。私も常々ナマコやアンキモやウニを最初に食べた人を誰だか知る由もないが尊敬している。そして、フグに挑戦して命を落とした人も多かっただろう。

 これは植物にも言えることで、特に自然発生しているもので警戒されるのはキノコ類だ。境内にも食用のキノコは稀に出るから、間違いのないものはお腹に収めている。たとえばキクラゲやその仲間のハナビラニカワタケ、5月頃必ず顔を出すアミガサタケなど。発生して一晩で黒いタールのように溶けてしまうヒトヨタケの仲間は、アルコールの分解を阻害して1週間くらい二日酔いの症状にさせる成分をもつ種類もあるので敬遠している。

 キノコの食文化は国毎また国内でも地方毎に習慣的な違いがあり、ナメコなどのぬるぬるしたキノコは日本人好みだが、海外では好かれていない。また、日本の山にも発生するヤマドリタケはポルチーニ、セップ、シュタインピルツと呼ばれ、トリュフと並んでメジャーなキノコとして珍重されている。ヨーロッパでヤマドリタケが市場に並べられているのは、虫食いだらけにする害虫がいないからで、日本には食べる虫がいて、人工栽培のできないヤマドリタケを虫食いのないきれいな状態で収穫することが困難だからだ。

 日本人は見た目も食文化で、白いキノコは全般的に食べないという地方もあったり、やはりフランス料理などで使われるアミガサタケ(モレーユ)などは日本人好みの外観ではなくあまり食べられて来なかったが、湯がくと弾力が出て口当たりも味も良い。

 色が毒々しいタマゴタケは実はとても美味しい。ただし、赤い傘に白いものがちりばめられているのは毒のベニテングタケ。名前は似ていて真っ白なのはタマゴテングタケ。こちらも猛毒だ。つまり外観やら名前が似ていると日本人は回避してきた歴史がある。写真は発生したてのタマゴタケにちょっといたずら描きをしてみた。「私たちは安全だよ」と言っているみたいに。

 我々が一般的にキノコと呼んでいる部分は実はキノコ本体ではなく、胞子を飛ばすために本体から地上へ出された子実体で、つまり花や種のような部分だ。だからそれを採ってもキノコ本体の菌糸は樹皮の中や土中にあって死ぬわけではない。シイタケやヒラタケ、キクラゲの類は腐朽菌と呼ばれ、弱りかけの木の内部に菌糸を広げて発生するので、木の養分がなくなってしまえば生きられなくなる。ホダ木のシイタケが3年ほどで出てこなくなるのは養分を全て奪われてしまったからだ。しかしキノコ類が担当している枯れ木や枯草の分解という役割は、自然界にとってなくてはならないものでもある。菌類なくしては森の堆積物は腐らず、土の栄養素とはならないからだ。

 地上での掃討作戦はある程度の成果をあげたが、ISは思想と共に地下に菌糸のような根を張り、思想の菌糸はフランスなどで凄惨なテロ事件を起こしている。地下の菌糸を根絶やしにするのは難しい。そしてひとたび子実体を出せば毒の胞子を飛ばし、自らも爆破する。飛んだ胞子は目に見えず、またどこかに根付いて菌糸を広げる。ISが核を使わないとも言い切れない。保有している国がIS掃討に使うかもしれない。誰か核を無力化する菌を見つけてくれないか。猛毒のキノコ雲はごめんだ。
 

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