町田版 掲載号:2017年3月16日号

町田市立博物館より㉓

大きいことはいいことだ

学芸員 矢島律子

染付竹虎文大皿江戸時代 19世紀 口径64.0cm
染付竹虎文大皿江戸時代 19世紀 口径64.0cm
 工芸美術品を賞賛するのに「ミュージアム・ピース」という言葉があります。質だけでなく、大きくて立派な作品は美術館展示にふさわしい、という意味合いがあります。筆者は、工芸美術の鑑賞には様々なスタイルがあってしかるべきだとつねづね考えているので、「大きければいいってもんじゃない」とこの言葉には否定的です。これまでも「ミニチュア」展とか「美は掌中に在り」展といった、小さいことの美をテーマにした展覧会を企画してきました。当館自慢の懐中時計や鼻煙壺も小さいからこそ魅力的なのです。

 しかし、今回は「大きいことはいいことだ」をど真ん中に据えた展覧会をやっています。5月7日まで開催中の「藍色浪漫―伊万里染付 図変り大皿の世界―」展のことです。藍色で文様を描いた大皿65点が展示室をうめています。

奇想天外なデザイン

 大きいことがこんなに気持ちいいと思ったことはありません。伊万里焼特有の美しい白磁に映える深い藍色の清々しさのためでしょうか。あるいは、大きな丸い画面に繰り広げられる、奇想天外なデザインや絵付けの見事さによるのかもしれません。65cmの大皿を磁土の塊から轆轤(ろくろ)で挽き上げる轆轤師や、姿態の異なる60羽の鶴で大画面を破綻なく埋め尽くす技量の絵付師は現代では滅多におりません。「俺達の轆轤の腕前と絵付の上手さを見よ!」という職人達の心意気が響いてきます。大きくなければ決して生み出せない世界を見事に作り上げているといえるでしょう。

伊万里焼って?

 伊万里焼と呼ばれている江戸時代の焼きものは、現在の佐賀県有田町一帯で生産された磁器のことです。伊万里はその出荷港の名で、有田焼の古い呼び名といってもよいでしょう。17世紀の初めに始まり、オランダ東インド会社を通じてヨーロッパ向けに輸出されたことで急速に発展し、「柿右衛門」や「錦手」と呼ばれる最高の磁器で一世を風靡しました。それらとは違って、今回の大皿は江戸時代後期19世紀のものです。従来この時期の伊万里焼は粗製乱造で質が悪いとされてきましたが、今回のような大皿が知られるようになって認識が一新されました。

宴会用の実用品

 これらの大皿は飾り用ではありません。宴会に使われた実用品です。江戸の終わりの一時期に財力のある町人達を中心に料亭文化が栄え、宴会を盛り上げる大皿料理が流行しました。料理をおいしく見せ、豪華に宴会を盛り上げるための巨大な皿に求められたものは斬新で豪華なデザインでした。

 今回はその重量感と伊万里染付磁器の質感を体感していただくために、口径65センチの大皿4点を展示ケースに入れずに展示しています。入り口すぐ正面の大皿では「むふっ」と笑った豪快な虎が、満月に照らされた竹林を闊歩しております。毎朝、扉を開ける度この大虎に「参りましてございます」と頭を下げて、「大物礼賛」の日々を過ごしております。

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