『祈り』をテーマに上梓 写真家・石川梵氏(市内在住)
市内在住の写真家・石川梵氏がこのほど、本を上梓した。集英社新書より「伊勢神宮〜式年遷宮と祈り」と岩波書店「祈りの大地」の2冊。人々の『祈り』をテーマに撮り続けてきた石川氏。東日本大震災から3年が経ち、改めて『祈り』について綴った。
石川氏は20年前にも朝日新聞より「伊勢神宮〜遷宮とその秘儀」を出版している。伊勢神宮への取材は30年を超える。今回は写真集ではなく、『祈り』をテーマに撮り続けてきた写真家の目を通して見えてくる「式年遷宮」を一冊にまとめた。
ただ神事や神域の解説本ではなく、20年に一度、執り行われる式年遷宮に関わる神事や神域などを様々な角度から捉えた写真と、取材して得た言葉を駆使して1300年もの長い間、信仰の対象になった伊勢神宮とともに、それを支えてきた人々の『心』は何だったのかを問いかける。写真の中には、一般公開されていない場所や神事なども多数掲載されている。
一方、「祈りの大地」は東日本大震災を中心軸にし、自身が世界各地で撮影した体験を織り交ぜながら、改めて大震災がもたらしたもの、人々の『祈り』を写真の枚数を抑え言葉で幾層にも重ねながらつづる。
震災翌日に調布飛行場を飛び立ち、眼下に広がる想像以上の壮絶な世界と、機上でふと振り返ると「なんてきれいな世界なんだ」と魅了される美しい風景。その中で、著者は『大いなるもの』を感じた。
「3・11を体験し、多くの人が色々なことを感じ、考えたと思う。もちろん自分自身も様々なことを考え、人生を思い返した」。言葉をゆっくり探しながら石川氏は話す。「これまで、多くの場所でむき出しになった自然の中に生きる人々を撮ってきた。自分が追い求めてきた世界がこんなに恐ろしいものだということを見てしまった」
石川氏はこれまで、インドネシアで捕鯨を生業にしている村を約20年にわたり取材し続け、また戦争状態にあったアフガニスタン、インドの大祭クンブメーラ、ヒンドゥー教徒の行者など世界各地で撮影してきた。地球の鼓動が伝わるような自然現象や、人そのものをカメラに収めてきた。「人は逆境に合えば合うほど、辺境に行けば行くほど、人は『祈り』を必要とする。『祈り』によって人は支えられる」と石川氏。
書籍は久美堂などで販売中。
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