古美術コレクターとして知られる 神辺(かんべ) 一善(かずのり)さん 横山町在住 80歳
木版画に魅せられて
○…明治・大正時代の木版画1500点をはじめ、高校時代から集めはじめた宝物の数々。かつてテレビ番組『開運!なんでも鑑定団』に出演し、そのコレクションが高い評価を受けたこともあった。8年前から社屋の一部をギャラリーとし年に2、3回ほど所蔵品を市民に公開してきたが今年10月、閉鎖を決めた。「もちろん寂しい思いはある。でももう年齢だからさ」とやさしく微笑む。思い出の宝物たちは今後、図書館などに寄贈する予定だ。
○…練馬区で生まれ、小3から八王子へ。高校時代、雑誌リーダーズダイジェストで知った「版画」に興味を持ち、アメリカから作品を購入した。「油絵みたい」。水彩画に慣れていた青年の心に強く残った。「実家が木材を扱う仕事だったので、木による版画は身近に感じました」。社会人になると神保町の古書店や各地の骨董市などへ足を運び、気に入ったものがあれば手に入れるように。版画で数万円する作家の作品が雑誌の巻頭を飾る三つ折りの口絵だと3〜5000円で購入できた。「この値段なら」と収集に拍車がかかった。
○…父親は埼玉県の越生で建具を作り、荷車で八王子まで運び、そこで商売を始めた。自分の会社名が入ったマッチを大工に配るなどしPRに努め、「開店前、店頭に100メートルくらい職人が並ぶほど」繁盛したそう。夜学に通いながら昼間は父の会社で働いた。26歳のとき、父親が倒れ家業を引き継ぐことに。その後、社名を「かんべ」とし、建築事業を手掛け、会社を大きく発展させた。
○…美人画作家の代表として知られる浮世絵師・鏑木清方(かぶらききよかた)の作品を敬愛する。「髪の照りなどにその技術の高さを感じます」。かつての木版画は絵師、彫師、摺り師による共同作業で作られた。「本画より優れていると思う。髪の毛一本一本彫っているんですよ」。巧妙な美しさがその魅力という。休みの日はコレクションの整理に明け暮れているそう。
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